■PKKのシグナル<PKKゲリラキャンプ取材>(2)
イラク戦争後、イラク・クルド地域は、あたかもクルディスタン独立国家が成立したかのような状況となっている。それに伴い、クルド地域の存在が、周辺のクルドの政治の動きに大きな変化もたらしている。イランやシリアのクルド組織は、イラク・クルド地域と政治的な関係を強化させている。しかし、トルコ国内でPKKにとってかわるような強力なクルド組織はない。
イラク・クルド地域政府は、トルコ・クルド組織への政治的アプローチを図ろうと、あれこれ模索してきた。それは、PKKの武装解除を求めるアメリカの意向とも合致する。そんななか、今年4月、レイラ・ザーナがクルド自治政府の招待でイラク・クルディスタンを訪問した。彼女は地域政府議会に招かれたほか、クルディスタン地域大統領マスード・バルザニと会見、さらにイラク大統領ジェラル・タラバニとも会見した。クルド地域やイラクの新聞、テレビがこの訪問を連日、大きく伝えたのに対し、PKK系のメディアは、ごく小さな扱いだった。
獄中にあるPKKのオジャラン指導者が、自分のあずかり知らぬところでイラク・クルドを訪問したレイラ・ザーナに激怒した、とも言われるが、真相は定かではない。いずれにしても、その後、彼女は、政治の表舞台からしばらく姿を見せなくなってしまった。
内外のクルド組織が手を結び、人権問題などでトルコ政府に圧力をかけてゆけばよさそうなものだが、PKKは、トルコ国内にイラク・クルド勢力の影響力が拡大することを歓迎してはいない。運動を牽引するには、自分たちこそ唯一的に強力でなければならないと考えているからだ。
PKKはイラク・クルディスタンが使うクルド旗も、運動内では認めていない。イラク・クルドの発言力増大とともに、トルコ国内で次第にひろがるイラク・クルドの影響を排し、クルド組織への引き締めをおこなう。そのために、トルコ軍との緊張関係を維持し、都市部には戦闘・政治工作要員を送り込む。その一部が治安機関にあぶりだされて、衝突が拡大したのではないか。トルコ国家内に、PKKの過激な行動を、政治的に利用しようとしている勢力もおり、背景は他の要素もからみあっている。
PKKの戦闘性や過激な運動手法には、批判の声が高い。民間人を巻き込み多くの犠牲もだしてきた。しかし、存在すら否定されてきたトルコのクルド人は、PKKの過激な運動に急速に引きつけられ、運動は急速に高揚した。その過激さゆえに、世界がトルコのクルド問題を知ることになったというのも、また現実なのである。PKKゆえに高揚し、PKKゆえにときとしてさまようトルコのクルド運動。この先、どう動くのか。
***********************************
イラク・トルコ・イラン・シリアにまたがるクルディスタン。分断民族クルド人とは。クルド問題とその他の地域も取材中(坂本卓/アジアプレス)




【お知らせ】 北朝鮮内部からの通信〜リムジンガン 第2号 販売開始!