イラクは「ベトナム化」しているのか 2 (2006/11/16)

いくつかの市民団体に呼ばれてイラクの現状について講演をしたことがある。遠いイラクの人びとに思いを馳せようとする人たちがいることは自分にとっても励ましになった。一方で、アメリカを批判すればそれで満足しがちな人たちが多い講演会もあった。武装勢力の現実を見極めずに「民族解放闘争」「反米レジスタンス」と決めつけている人もいた。
イラクで起きている現実を話す機会を通じて、私は自分の考えをできるかぎり伝えようとしてきた。
クルド人やシーア派がフセイン政権に抑圧されているとき、だれが、彼らの叫びに耳を傾けただろうか。イラク戦争後の混乱で、十数万のイラク市民が命を落としたという。これに比べ米兵は3000に"満たない"。フセイン政権下では数十万が殺されたというが、実態すら分からない。
ブッシュ政権が終われば問題が解決するのか。あえて言えば、むしろブッシュに「罪」はない。彼を選んだのはアメリカ国民だ。フセイン政権を生み出したのはだれなのか。いまのイラクを作り出した責任−罪を負っているのは、誰なのか。アメリカはもとより、これまで無関心であり続けた国際社会であり、私たちだ。
「即時撤退」というスローガンはやめにして、せめて「アメリカはいまの混乱についてまずイラク国民に謝罪せよ。自国兵士(米兵)にいくら犠牲がでようとも、治安回復の責任を取れ」ぐらいのスローガンにするのはどうだろうか、とも思うが、そうもいかないだろう。
米軍はまず撤退し、国連やアラブ諸国、イスラム諸国軍が入るのが望ましいのでは、と私はさまざまなイラク人に訊いてみたが、「戦争直後なら可能だった。いまは遅すぎる」「無力すぎる」とこたえたイラク人が多かった。
「これがアメリカの民主主義か」「アメリカの民主主義など見たことない」というのは、イラク人が流行り言葉のように使ったフレーズだ。とくに外国人記者の前で頻繁に使われた。
アメリカがイラクにもたらした民主主義によって、シーア派やスンニ派のイスラム政党が選ばれ、反米強硬派のサドル師が力をつけた。なんとも皮肉な話だ。そして世界各地から過激なイスラム義勇兵を呼びこんでくるというオマケまでついた。
だが、政治や国内は混乱しようとも、アメリカの利権は揺るぎはしない。じつはいまの混乱も、計算済みだったのか、という思いもよぎる。「アメリカの失点」ばかりに気をとられると、イラク情勢を見誤ることになる。
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