![]() 【これは内務省発行のプレスカード。イラク国民議会選挙のときのもの】 |
昨年、イラク・クルディスタンで取材していたフランスのフリーランスの女性ジャーナリスト、シリルと、彼女のパートナーのクロアチア人男性フォトグラファー、サーシャ。ふたりでクロアチアでしばらく生活する、という知らせが届いた。
彼らは、イラク・クルディスタンを中心に精力的に取材をしてきた。
フランス人の彼女とは、アンサール・スンナ軍の自爆事件の現場で知りあった。100人を超える死傷者がでた凄惨な自爆の現場。現場で取材をしている外国人はほとんどいなかった。
AP通信と契約を結んでいたサーシャは、政府高官にいくつもの情報網を持っていて、ニュースがあれば、いちはやく現場にかけつける機動力をもっていた。濃いあごヒゲをたくわえた彼は、そのいかつい風貌に似合わず、お手玉を常に持ち歩き、ヒマがあれば、お手玉をしていた。
写真やテレビ取材の仕事をしていると、撮影時に子どもの心をいかにひきつけるか、みんな苦心する。彼はこのお手玉で、いつも子どもの心をつかんでいた。
イラク・クルドには、常駐する外国人記者は少なく、たまに短期でBBCやCNNなど大手が特集番組の取材などでやってくる程度だ。記者会見も、ほとんどが地元メディアの記者ばかり。彼ら2人と、私と玉本、そしてあとひとり、クルドを追いかけるスイス人記者のあわせて5人で、「外国人記者クラブでも作ろうか」などと寂しい会話をしたことも、いまはとても懐かしく思える。
彼らとともに追い続けてきたクルド。世界に無視されてきたこの地をとりまく環境は大きく変わった。中東で大きな政治的役割を果たすようになった。自治政府は先日、アルビルを中東随一のメディアセンターにする構想を発表した。
プロジェクトをたち上げるのが好きな自治政府なので、実現するかどうかは定かではないが、近い将来、本当に外国人記者クラブができるかもしれない。
旧ユーゴで内戦を経験した彼は、宗派、民族の複雑な対立関係が先鋭化し絶望的になったいまのイラクを見て、嘆いた。
ユーゴの経験から、解決は可能だろうか、と、きいたことがある。
「もう、手遅れだな。隣人どうしがいきなり敵味方になることを強いられる。だれもがおかしいと思っていることを、とめられない。それが内戦」
彼は、お手玉をぐるぐると回しながら、言った。
「アルビルのアイスクリーム屋で、またアイスを食べよう」
彼らからのメールは、そう結んであった。
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イラク・トルコ・イラン・シリアにまたがるクルディスタン。分断民族クルド人とは。クルド問題とその他の地域も取材中(坂本卓/アジアプレス)





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