![]() 【ネウロズの前日にアルビル城にともされた炎(3月20日)】(アルビル/撮影:坂本卓) |
イラク・クルディスタンのアルビルで取材中だ。春分の日にあたる3月21日、クルド人はこの日をネウロズと呼ぶ。クルドの新年として新しい1年の始まりを祝う。
街角ではあちこちで火が焚かれ、炎を囲んで踊る。イランではノールースと呼ばれ、日本の正月のごとく、家族や親戚を訪問するなどして新年を祝う。だが、抑圧の歴史を歩んできたクルドにとっては、別の意味を持つ。
トルコ、イラク、シリア、イランなどクルディスタンを分けるそれぞれの国で、抑圧への抵抗の象徴的な日となってきた。ネウロズに関する歌は数え切れない。春の到来を祝う歌詞のほかに、圧政への抵抗や自由への願いが織り込まれている。
ネウロズとは「新しい日」を意味する。その由来は、伝説が伝わるイランや中央アジアですこしづつ異なるのだが、クルド版はこうだ。話は紀元前にさかのぼる。かつて頭に双頭のヘビを載せた王ズハークという暴君がいた。王は、臣民のなかから毎日、男児を選び、その頭を切りとっては、ヘビに与えていた。
鍛冶職人カワが、息子を差し出す番がめぐってきたとき、カワは王の城に向かい、ズハーク王をその手で倒した。その日こそネウロズの日であった。以来、圧制に対して立ち上がるクルド人の勇敢さをしめす日となったとされる。
クルド語のクルマンジはNewroz、ソラニではNawroz(نوروز)と書くが、たとえば、トルコではNevruz、アゼルバイジャンではNovruzとなるので、どの表記が正解というわけでもない。(日本の蕨在住のクルド人はネブロスと呼んでいる)
トルコの南東部では長いあいだ、この日に集まって祝うことすら禁止された時代が続いた。クルド人がこの日を抵抗闘争のシンボルとしてきたからだ。
シリアでは一部容認されるようになったが、政治的なスピーチをしただけで解散措置の対象になる。一方、自由を手にしたイラクのクルドは、ネウロズは公休日。さらに前2日間が連休で、人びとはこぞって郊外にピクニックに向かう。
テレビ番組の取材予定があってこの日はどうしてもイラク・クルディスタンにいなければならなかったのだが、今年はトルコでは、事前弾圧で数百人が逮捕されたという。しかしながら、ディヤルバクルではレイラ・ザーナが数十万人の群集とともにネウロズを祝ったと報じられた。行けなかったのが残念だ。
クルド地域政府文化省は、今年、衛星放送NEWROZ TVを開局する。分断された4つの地域のクルド人が番組作りに参加するという。
アルビルの中心にそびえるアルビル城では、ネウロズの日の前日、大きな火がともされた。火は大きな炎となって、夕空に高く揺らめいた。クルディスタンすべてに春がやってくる日を、願ってやまない。
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イラク・トルコ・イラン・シリアにまたがるクルディスタン。分断民族クルド人とは。クルド問題とその他の地域も取材中(坂本卓/アジアプレス)





