rimjingang-No2-hs-s.jpg
季刊誌 北朝鮮内部からの通信〜リムジンガン 第2号・夏号
ご注文はこちらへ


ico_new2.gif北朝鮮不動産取引の怪 リムジンガン
〈解説〉住宅闇市場と横行する不正腐敗 1
朝鮮において、国家による住宅供給制度は、既に一九八〇年代から不正腐敗にまみれながら崩れていったといわれる…

ico_new2.gif市場の民衆たちがもつ「統一」のイメージ [民衆の暮らし]リムジンガン
党と国家の宣伝教化によって形成され、学者や教員、作家、記者らを通して植えつけられた住民たちの統一観は、かつては次のようなものだった…

ico_new2.gif北朝鮮―08年食糧危機の実態と背景を探る 5(リュウ・ギョンウォン)リムジンガン
5 一九九〇年代後半の食糧危機との違いと共通点
これまでにも少し触れたが、一九九〇年代の食糧危機は当初、労働者地区と都市で発生した…

ico_new2.gif北朝鮮―「ジャガイモも米だ」[ことば] リムジンガン
会議場の室内温度計の水銀柱が久しぶりに二度を示している。 なぜかこの地方に、突然、中央党からの講師がやってきて、幹部講演会を行うという非常召集令が下ったため…

北朝鮮―08年食糧危機の実態と背景を探る 4(リュウ・ギョンウォン)リムジンガン
4 食糧危機の原因となった施策
一党独裁政治の朝鮮におけるさまざまな危機発生には、党と政府のそれぞれの問題が複合的かつ無秩序に絡み合い影響を及ぼしている…

もっと見る

坂本卓のクルディスタン日誌 「トルコ軍の越境は宣戦布告とみなす」(2007/04/15)

saka_070415a.jpg
【「越境攻撃は宣戦布告とみなす」トルコに警告したケマル・キルクーキ クルディスタン地域政府議会副議長】(撮影:坂本卓)
■「トルコ軍の越境は宣戦布告とみなす」〜背景にキルクーク問題

イラク領内のPKKゲリラキャンプに対するトルコ軍の越境空爆問題が熱くなりはじめている。
12日、クルド地域議会のケマル・キルクーキ副議長は、記者たちを前に会見を開いた。
「わが領土に対するいかなる侵攻も、イラクへの宣戦布告とみなす」
PKKのゲリラキャンプ掃討名目であっても、イラク領そしてクルド地域領にトルコ軍が入れて攻撃を加えることを許さない、と改めてトルコに警告したのだ。キルクーキ氏から「宣戦布告」という言葉が出たのは、驚きだった。

キルクーキ氏は、PDK(クルディスタン民主党)の中央政治局員だ。90年後半、PKKとPDKが激しく衝突していた頃、ドホークのPDK代表を務めていた。キルクーク氏は、PKKを嫌悪してきた。PDKのペシュメルガ十数人がPKKゲリラに招待され、食事をふるまわれた後、集団で銃殺された事件や、自分がドイツで亡命生活を送っていた頃、PKKがドイツなどでトルコ系商店や企業を焼き討ちしたり襲撃するなど過激な行動を繰り返し、ヨーロッパでのクルド人の政治運動を台無しにした、というような話を私はいくつも聞かされた。

かつてPDKは、トルコと協定を結び、PKK拠点追撃のためにトルコ軍と共同軍事作戦までとってきた。こうした経緯があるにもかかわらず、このかんバルザニクルド地域大統領が、トルコ国内のクルド人政策に深く言及したり、キルクーキ氏のような地域政府高官から「宣戦布告」発言が繰り返されている。

「明日にも越境攻撃できる」と息巻くトルコ軍参謀総長をよそ目に、これまで地域政府幹部は比較的、冷静に対応してきたのだが、ここにきて強硬な発言が目立ち始めた。そして、地域政府政治家だけでなく、バグダッドのイラク政府高官やアラブ人政治家にもこれを後押しする姿勢を見せる者が出始めている。

通常、トルコ軍がPKK掃討作戦を開始するのは、山岳地帯の雪解けがはじまる春先から夏にかけてだ。トルコ側では掃討作戦ははじまっているが、ここで、トルコ側がイラク越境警告を繰り返し、緊張が高まっているのは、昨夏から、トルコ軍に多数の戦死者が出ていて、軍が我慢の限界にきているという見方もある。しかし地域政府高官は、5月に予定されるトルコ大統領選挙のための国内の政治問題と、キルクークのクルド編入妨害が目的であるのは明らかだ、としている。

事実、高官らがPKKとトルコ軍の越境問題について触れる際、必ずといっていいほど、キルクークへのトルコの干渉について触れるのを忘れない。

「トルコが私の故郷キルクークのクルディスタン編入に口出しするのは内政干渉だ。絶対に許さない」と語るキルクーキ氏。PKKとの苦い記憶は過去のものとし、いまこそクルドが団結してトルコの介入を阻止することが最優先、と考えているようだ。

イラク・クルディスタンの普通の人びとはこれまで、PKKに対しては悪いイメージか、またはほとんど詳しくは知らなかった。しかし、かつてないまでにイラクのクルド人にはPKKへの友好的感情が芽生えてきている。地域政府文化省はこれまで関係の薄かったPKK系の歌手らをイラク・クルディスタンに招待したり、PDK系テレビに登場させたり、数年前には考えられなかったことだ。

トルコ国内の非PKK系クルドメディアや知識人は、トルコのEU入りを望まない、軍を中心としたケマリスト勢力がPKKの過激な活動を誘発しているのではないか、そうすれば軍の存在意義を示せるからだ、という分析をしてきた。

しかし、最近の動きを見ていると、PKKの行動は、じつは地域政府の最大課題クルクーク問題とも深く連動してるのではないかと思えるようになってきた。

「必ず侵攻する」「越境は宣戦布告とみなす」と双方の過激な発言が飛び交うなか、PKKがトルコ・イラク国境衝突の引き金になるとは思わないが、今後、国境の情勢はさらに緊張するだろう。いま、PKKの運動をトルコ国内の運動だけと見るのではなく、イラク・クルディスタンの政治的動きと重ね合わせて見ていくことが重要になると感じている。


<<前 | 次 >>
***********************************
イラク・トルコ・イラン・シリアにまたがるクルディスタン。分断民族クルド人とは。クルド問題とその他の地域も取材中(坂本卓/アジアプレス)