バグダッド従軍日誌(11) ランチタイムに
クルディスタン日誌というより、しばらくは「バグダッド日誌」ですが、そのまま続けます。
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![]() 【 昼食は羊肉角煮、ナス煮込みとライスにパン、そして缶ジュースがつく。兵士も上官も同じメニュー】 |
兵士たちの食事は、けっこうイケるメニューだ。料理長は2年来のつきあいで、彼の腕前は、軍隊のコックさんにしておくのはもったいないほど超一級だ。彼の料理をバグダッドで食べることができるなんて想像もしなかった。ひさびさの再会の祝って、食べきれないほどおかずをおまけしてくれた。
かつては家族で食事にでかける姿もよく見られたバグダッドだが、イラク戦争後、状況は一変した。物価が高騰し、メニューの値段は跳ね上がった。そして、治安悪化で、家族ででかけることもままならなくなった。
街中の有名レストランや大衆食堂の多くが店を閉めざるをえなくなり、優秀な料理人が国外に安全と職を求めて流出した。
軍の基地内の食堂では、料理長を除く厨房スタッフが地元バグダッドで採用されている。食堂での自爆事件や毒混入事件などもあり、スタッフ採用も慎重だった料理長は言う。ここで働く彼らも、命がけだ。スタッフには、顔の写真は撮らないでくれと言われた。軍に協力していることがバレると、武装勢力に命を狙われるのだ。
ランチタイム、兵士たちは食事をうけとるために長い列をつくるのだが、この日は食堂の前が騒がしい。
兵士たちがトラックを取り囲んでいる。食材を市場から買い付けて納入しているトラックが、基地を出て、しばらく走ったところで襲撃され、戻ってきたのだ。
【 サドル派マハディ軍に銃弾を撃ち込まれたトラック。軍への協力者への襲撃、暗殺、脅迫は絶えない】 |
黒覆面の男たちの乗った車に行く手を阻まれ、いきなり自動小銃で銃撃を加えられたという。トラックは、車体に何発も銃弾を撃ちこまれながらも、追っ手を振りきって逃げてきた。車体には銃弾が貫通した後がいくつもあいている。窓ガラは粉々に割れていた。
「サドル派のマハディ軍のやつらだ。私の車を尾行してきたんだ」
警察の検問に逃げ込んだ運転手を、警官は助けてはくれなかった。
シーア派の多い警察は、この地区ではマハディ軍と連携しているのだ。
車のナンバーはもうマハディ軍に控えられたので、トラックは売り払うしかない、という。
軍は、なんとか仕事が継続できるよう協力する、と言ったが、運転手は、今後も協力するかどうかは、わからないと話した。
「この仕事をやめれば収入がなくなる。でも、こんどは家族が狙われるかも…」
と、力なく話した。
「敵」とみなしたものは、容赦なく攻撃する。武装勢力にも、米軍にも、それがここでの「ルール」なのだ。
後味の悪い食事になってしまった。
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イラク・トルコ・イラン・シリアにまたがるクルディスタン。分断民族クルド人とは。クルド問題とその他の地域も取材中(坂本卓/アジアプレス)





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