バグダッド従軍日誌(12) 米兵の胸のうち…(1)
クルディスタン日誌というより、しばらくは「バグダッド日誌」ですが、そのまま続けます。
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【 マハディ軍との戦闘で押収したRPGロケット砲とBKC機関銃を前に話す米陸軍のコティ少佐】 |
イラク軍司令部には、米軍も前線指揮所を置いている。
「ここがどこかわかっているのか。よくこんなところまで来たな。この地区にたどりついた記者は初めてだ」
米陸軍第1歩兵師団のウィリアム・コティ少佐(35)は、そう言った。少佐は、目をこすりながら、大きなあくびをした。
「奇襲作戦は夜から明け方にかけてやるから、昼は寝てるんだ」
これまでコロンビア、アフガニスタンなどを経験してきたという少佐。
「これまでの戦闘でイラクが最悪だ。よく見ておけよ。ここが本当のバグダッドだ」
最前線の米兵は神経質になっていて、話すらしてくれないことが多いのだが、少佐は軍事機密事項は除いて、イラク戦争への考えや家族のことなど、複雑な胸のうちも明かしてくれた。
「イラク戦で米軍はいくつもの間違いをおかした。まず、フセイン政権の治安機関を一気に破壊したこと、国境を閉ざさなかったこと、その後、警察を作ったことだ」
彼が率いる部隊は、イラク陸軍特殊部隊とともに連日、武装勢力摘発作戦を展開している。彼らが戦っている相手は、サドル派のマハディ軍と、スンニ派のアル・カイダ系組織の両方だ。
窓を土のうで閉ざした薄暗い狭い部屋の壁にピンで留めているイラク国旗は、ずり落ちそうだった。その斜め横には、アーメル地区の衛星写真で拡大した作戦図。これまでに駆逐した「敵の拠点」を示すX印がつけられていた。
「ヒロシマ、ナガサキの原爆の是非はともかくとして、2つの原爆で20万の民間人が犠牲になった。この4年でイラク市民の犠牲は、とっくにヒロシマ、ナガサキを越えている」
少佐は、アラブ式の紅茶を飲みながら、そう言った。彼はイラクに送られたことの葛藤にさいなまれているわけではない。どんな環境でも命令に従い、ベストを尽くす「プロの軍人」だ。彼は祖国アメリカと家族に支えられているからこそ、戦い続けられると話した。ただ、苦戦するイラクで、いつまで、どう戦うのか、見えてこないことへの苛立ちが伝わってきた。
少佐は、この地区で数日前に発見したマハディ軍の拷問室について話した。地区住民の情報から、アジトのひとつを割り出し、急襲すると、一面に肉片と血が飛び散った異臭漂う部屋が見つかった。スンニ派の若者を連行し、監禁し、殺害していた部屋という。天井からつるされたフックに体をつるし、ノコギリやドリルで拷問を加えていたという。
あなたたち米軍は、ここの人たちに歓迎されている存在だと思うのか、と私は彼に訊いた。
「武装勢力の暴力から守れば市民は支持してくれるが、武装勢力を殺したり逮捕すれば、その家族から怒りが向けられる。そして、それがときとして同じ市民なんだ」
戦争は、イラクという国の運命を変えただけでなく、イラク人の心も変えてしまった。イラク攻撃以降、国内外に避難せざるをえなくなった人の数は300万を超えるといわれる。
米軍がイラクに留まれば反米攻撃はさらに激しくなり、即時撤退すれば宗派間の暴力が拡大する。米兵にとっても、イラク人にとっても、この地獄は続く。いったいイラク戦争とはなんだったのか。
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イラク・トルコ・イラン・シリアにまたがるクルディスタン。分断民族クルド人とは。クルド問題とその他の地域も取材中(坂本卓/アジアプレス)




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