バグダッド従軍日誌(13) 米兵の胸のうち…(2)
![]() 【1日の任務を終え、司令部に戻ってきた米兵。武装勢力の攻撃が激化し、ボディ・アーマー(防弾胴衣)も上腕まで覆う強固なものに】 |
バグダッド、アーメル地区前線司令部は、以前は学校の建物だったという。校舎はいま防護壁で囲まれ、土のうが高く詰まれ、窓はすべてふさがれている。普通の住宅地の只中に、いきなり野戦基地があるようだ。
米陸軍第1歩兵師団、コティ少佐は話を続ける。
「この2ヶ月で4人戦死。負傷者はもう毎日だ。だけど、その数倍は敵を殺したよ」
少佐はさらりと言ってのける。目の前にいるこの人は、もう20人を超える人間を殺しているのだ。
敵にどんな理由があろうとも、「容赦なく殺す」のが命令であり、悩むことは自分の死につながる。
相手が「テロリスト」であるか、ないか。その判断は、自分が生き残ってはじめてできる。自分が死んでからでは遅い。その「テロリスト」はなぜ生まれ、誰によって作りだされたのか。それを考えるのは兵士の役目ではない。
「自分は兵士だ。攻撃してくるものは拘束するか、殺すかだ」
少佐は、やはり、さらりという。それが彼のイラクでの仕事であり、戦争の「プロ」としてその任務を忠実に遂行しているのだ。
![]() 【米軍のM136バズーカ砲。「市街戦では民間人の犠牲を避けるために使うことは少ない」という米軍だが、そんなことはない。市民がいても撃つときは撃つ】 |
自衛官が、「外国の戦地」で同じことを言うようになるのは、もう遠い将来のことではない。
自衛官はその覚悟ができているのだろうか。そして日本社会はその覚悟が本当にあるのだろうか。
「それでも必要なことだ」「かまわない」と言えるだけの根拠を示せるほど、私たちは戦争の現実を知ろうとし、議論をしたうえで、決断をしようとしているのだろうか。
イラクはあとどのぐらいで治安が回復すると思うか。私はきいた。
「それは状況次第。イラク人がまとまれば事態は好転するし、まとまらなけりゃいつまでもこのままだろうな」
イラクは、まとまるどころか、分裂の危機を迎えている。
アメリカはじつは「イラク分裂」のシナリオを待っていたんじゃないのか、と私は言った。
「それは、政治のカテゴリーだ」
少佐は、そう言いながら、土のうでふさがれているのに、窓に目をやった。
コティ少佐のイラクでの任期は、あと1年という。
「きみとは、こんどは別の場所で会えるといいな。ここじゃなくてね」
少佐は笑った。
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イラク・トルコ・イラン・シリアにまたがるクルディスタン。分断民族クルド人とは。クルド問題とその他の地域も取材中(坂本卓/アジアプレス)






