アフガン韓国人人質事件〜「人質殺害」はあるか
![]() 【ガズニ州の治安部隊(FILE)】撮影:坂本卓 |
アフガニスタン・ガズニ州でタリバンの人質となった韓国人の交渉期限が迫っている。武装組織による拉致、誘拐、人質事件は何を目的としているのだろうか。
まず武装組織が人質の解放と引き換えに要求をするのはほんどの場合、このいずれかだ。
1.金銭的要求
2.政治的要求
これらに加え、人質をとることで宣伝効果(プロパガンダ)を狙うこともあるし、コロンビアのゲリラ組織は、その金銭、政治要求の要素が合わさって、誘拐専門のプロ集団から、人質の身柄を買い受け、仲間の釈放や活動資金奪取などを行なう。イラクでは、武装勢力に見せかけた強盗集団による誘拐事件もおきている。
もともとタリバンは、「外国人人質」を戦術とするような組織ではなかった。2002年、アフガニスタンで柳田大元氏がタリバンに拘束されたが、当時の状況では、タリバンが自分のエリアに入り込んだ不審人物をスパイ容疑で拘束したという側面が強い。
アフガニスタンでは、山賊がいまも跋扈しているし、治安部隊と連携している地域さえある。外国人は大量の現金で持ち歩いていると知れ渡っているため、専門に狙う強盗集団もいる。
今回、ガズニで拘束された韓国人人質事件のケースは、大型バスに乗っていたところを23人がまるごと拘束されている。強盗や身代金目的ではなく、明確にタリバン兵の釈放を求めるなど政治的要求を背景としたものと思われる。
18日にワルダックで連れ去られた2のドイツ人のうち、1人は「殺害」されたが、「心臓発作が原因」という報道もある。重要なポイントは、今回は同時多発的に各地で外国人が拉致されている点だ。組織に指揮系統があり、連携しているのではないか。
![]() 【タリバン政権崩壊直後、街角にはいくつもタリバンのモニュメントが残っていた(2002年/FILE)】 |
タリバンの実態をどう捉えるか。「野蛮で残忍」というイメージは、アメリカがアフガン攻撃の際、圧倒的な情報量で作り上げた部分が大きい。
タリバン政権は厳格なイスラム法を適用し、窃盗の刑罰に腕を切り落としたり、公開処刑で罪人を殺害していたのは事実だが、適当に捕まえてきては、いきなり好き勝手に殺していたわけではない。タリバンなりにではあるが、基本的に裁判という手続きを経て、刑罰が下されていた。
交渉期限が迫る韓国人を、タリバンが実際に殺害するかどうか。再編成されつつあるタリバンの何が変わり、何が変わっていないのか。イラクでの人質事件の場合は、外国人義勇兵が入っているかどうかが、外国人人質殺害のゆくえを決めるひとつのポイントとなった。
2004年当時のイラクでは、交渉が難航したり、要求が受け入れられなくても、「殺害予告」どおりに殺すことはせず、人質を釈放したケースが多かった。しかし、イラク人武装組織に外国人義勇兵が組織に入り込んでいた場合は、交渉の強硬さ、非妥協さは格段に違った。そして人質の殺害を躊躇なく実行した。
環境は人間を変える。いま、外国人がイラク人武装組織に誘拐されれば、助かる可能性は低いだろう。外国人義勇兵でなくとも、容赦なく人間を殺害できるまでに、組織もメンバーも変質したからだ。タリバンは最近、戦闘員が訓練する様子を動画で公開したが、「自爆殉教戦士」養成をするなど、かつてとは戦術も変わってきている。
イラクで誘拐されたドイツ人の解放条件が「アフガニスタンからのドイツ軍の撤退」という「要求の関連付け」が起きたように、韓国軍がアフガニスタンから撤退を表明していても、こんどは「イラクからも撤退を」という要求に変わることもありえる。そうなると事態はさらに複雑化する。
人質事件では、解放交渉がすすんでいても、人質の処遇に困って殺害してしまうこともあれば、人質が自分で脱出をはかり殺害されたケースもある。過激なメンバーの独自判断で、殺害を決意することもある。政府軍や米軍の強行突入に巻き込まれることもある。
3月、タリバンに誘拐されたイタリア人記者は交渉の結果、解放されているが、今回の事件の背後にアル・カイダ系など過激な外国人義勇兵が関与していれば、人質殺害の可能性はさらに増すだろう。
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イラク・トルコ・イラン・シリアにまたがるクルディスタン。分断民族クルド人とは。クルド問題とその他の地域も取材中(坂本卓/アジアプレス)






