フリージャーナリストの死
![]() 【取材中、武装勢力に切り裂かれた左掌を見せる、アメリカABCテレビのイラク人契約カメラマン。彼は今年5月バグダッドで殺害された。05年3月イラク・アルビルにて撮影】 |
ミャンマー・ヤンゴンで日本人殺害、という情報が流れた。アジアプレスにも各メディアから問い合わせの電話が相次ぎ、対応に追われた。
アジアプレスと関わりのあるフリージャーナリストでミャンマー(ビルマ)を専門に取材をする人は何人かいるが、かれらの中でこの日、ミャンマー国内に入っている者はおらず、情報は錯綜した。
反政府デモの取材中に銃撃を受け、亡くなったのは長井健司さんという取材経験豊富なフリージャーナリストだった。
直接面識のある人ではなかったが、報道を見る限り、とても他人ごととは思えない。
デモ取材はとても難しいと私は思う。アメリカ同時多発攻撃直後に、私はイスタンブールのモスクで行われたビンラディン支持の集会とデモを取材した。警察部隊が包囲する中、私は群集の近くに寄り、ビデオ撮影をしていた。
スピーチをしていたのは、アラブ人などの外国人。「ビンラディン万歳!」と叫ぶ参加者は女性も含む地元の厳格なイスラム教徒たちだった。当時、当局はクルド人のデモに対しては厳しい措置を行っていたが、イスラム関係者に対してはどちらかといえば寛容な対応をしていた。私は特に問題ないと考えていた。
しかし、事態は急変した。突然、煙が見えたと思ったら、目に激しい痛みを感じ、呼吸ができなくなった。警察部隊が催涙弾を撃ったのだ。警察は全員ガスマスクを着用していた。群集に囲まれていた私は周りが見えず、状況を把握できていなかった。もし、あれが銃弾だったら…。
ジャーナリスト殺害と聞くと、イラクで武装勢力に銃撃されたフリージャーナリストの橋田信介さんと小川功太郎さんを思い出す。あれから3年。現在、バグダッドの現場で外国人記者が取材に出ることはほとんどないが、地元ジャーナリストは命がけで撮影を続けている。そして命を落とす者も少なくない。
アメリカABCテレビのイラク人契約カメラマン、アラディン・サアドさんは、今年5月バグダッド市内で武装勢力に殺害された。2年前、私は彼と話をしたことがあった。彼はABCの記者証を靴下の中に入れ、小型ビデオカメラを片手に現場に出ていた。2人のちいさな娘を持つ父親でもあった。
「仲間4人が取材中に死んだ。でも僕はイラク人だ。ここに残り、世界にイラクのいまを伝える」淡々と語る彼の表情を私は忘れない。
私はミャンマー取材をしたことはないが、北朝鮮につぐ「取材」の難しい場所と聞いている。その現場の前線に立ったジャーナリストの死。悲しい。




