■すでに越境しているトルコ軍
![]() 【イラク領クルディスタンの町アメディエに「駐留」するトルコ軍の軽戦車。後ろの建物はアメディエ町役場。クルディスタン旗が見える。この「奇妙な」光景を見たときには驚いた。(2005年撮影)】撮影:坂本卓 |
これに対し、イラクのクルド勢力は、領土侵犯はいかなる理由でも認めない、との見解で一致し、強硬な姿勢も辞さないとしている。このためアメリカは、トルコに自制を強く促しているが、この緊張の高まりは、原油価格にも大きな影響を与えている。
トルコ軍の越境攻撃はPKK壊滅のための伝家の宝刀のような伝えられ方をしているが、果たしてそうだろうか。
じつは、トルコ軍はこれまで国境線を越えた攻撃はなんども繰り返してきた。PKK掃討名目に国境線をはさんでイラク領に迫撃砲攻撃を加えてきたし、ゲリラキャンプには空爆もおこなっている。ゲリラ拠点だけでなく周辺の村々まで被害が及ぶような無差別砲撃に対し、クルド政府は抗議をおこなっているが、攻撃は続いてきた。
今回、大きな問題となっているのは、軍が実際に地上兵力をもってイラク領内に侵入し、PKKと交戦する事態が起きるかどうかだ。しかし、イラク側のドホーク県一帯の国境線近くの町々では、トルコ軍が部分的に駐留してきた。
![]() 【トルコとイラクの国境地帯の山々は多くの地雷が敷設されている。写真は一部撤去された地雷の処理区域を示す警告板(2005年撮影)】撮影:坂本卓 |
一昨年、トルコと山づたいに国境を接するイラク領アメディエの町を訪れたときのことだ。町の中心部にトルコ軍の軽戦車が鎮座し、石壁に囲まれた"要塞"のなかにトルコ兵がいた。この光景にはさすがに驚いた。地元の人によると、もう10年ちかく居座っているという。クルディスタン政府も、イラク政府もこの越境駐留は「黙認」している。
町を見下ろすようにそびえる山々のつらなる峰。その反対側はもうトルコ領、ハッカリ県のチュクルジャだ。ここでは、いまもトルコ軍とPKKの激しい衝突が繰り返されている。
今回は大規模な地上兵力を投入しての軍事作戦が明確に企図されている。PKK包囲網づくりにトルコ政府は躍起だ。イラク政府もクルド政府も表立っては「侵攻反対」の立場をとっている。何らかの混乱といくつかの「派手な」出来事はあるだろう。しかし、水面下では「PKK問題解決のロードマップ」ができあがっている感じがしてならない。果たしてそうなら、トルコ、イラク、クルド政府、アメリカ、そしてPKKは、どこに「落としどころ」をもっていくのだろうか。
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イラク・トルコ・イラン・シリアにまたがるクルディスタン。分断民族クルド人とは。クルド問題とその他の地域も取材中 (坂本卓/アジアプレス)






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