■トルコ軍が狙うPKK拠点
![]() 【PKKの最大拠点カンディルでゲリラ部隊と無線交信するPKKの司令官(FILE)】(撮影:坂本卓) |
トルコ軍の越境が間近といわれている。トルコ軍が攻撃をするならば、そして攻撃できるのは、いったいどこか。前にも書いたが、「東京〜仙台」の距離に相当する国境線地帯を、トルコ軍が全面攻撃できるわけはない。
イラク北部のPKK展開地域は、大きくわけると、ボタン、ザグロス一帯、そして最大拠点のカンディルになる。地域といっても、その大きさは、たとえば、ボタン地方だけでもトルコ・イラク国境、ザグロスはイランに伸びる山脈であり、広大なものだ。そこに4000〜6000人といわれるゲリラが拠点を設けている。
ほとんどは山岳地帯で、険しいところでは標高3000メートルを超える。冬は2メートルに達する深い雪に覆われ、春先も、山頂付近では雪がとけることはない。険しい峰々が果てしなく連なる地形は、そこが、地理的にはイラク国内であることを忘れさせる。
PKKのゲリラは、こうした場所に根拠地を作り、点と点を線で結びながら、支配地域を維持してきた。PKKの地域に入るには、ゲリラの厳しい検問をいくつもこえなければならない。イラクの2大勢力PUK(クルディスタン愛国同盟)、PDK(クルディスタン民主党)も、PKK地域内に立ち入ることはできはしない。
かつて私がこの拠点に入ったときは、イラン国境から、「けもの道」を越えて入ったが、いまはイラン軍が封鎖している。再びキャンプを訪れたときはイラク側から入ることになった。PKKゲリラ司令部だけでなく、クルディスタン地域政府の治安総局アサイシとも交渉し、許可を得なければならないにほど厳重だった。
ゲリラは、いくつもの山道を越えて、地雷の敷設されたトルコ国境を抜け、トルコ軍攻撃に出撃する。トルコ軍が反撃すると、ゲリラは再び国境をこえてイラク側に逃げ込む。「自衛目的以外の戦闘行為はしない」とPKKはいうが、その基準は明確ではない。
トルコのメディアは、こうしたイラク北部のこうした特殊な場所を「テロリスト天国」「テロの巣窟」と表現してきた。トルコ人からすれば、残酷非道な殺戮をおこなうテロ組織がなぜ自由に活動を許され、拠点が放置されているのか、といった心情を持つだろう。
PKKは、中東政治という複雑な環境を読み、20年以上にわたって存在し続けてきた。トルコ国会での越境攻撃承認をうけて、トルコ軍やそしてトルコのメディアさえも、あたかも「PKKとの最終決戦」となるかのような意気込みを見せている。しかし、攻撃するにしてもイラク政府だけでなく、国境を接するイラン、そしてNATO同盟国アメリカの了解も得なければならない。
すでに何度も空爆をしてきた地域、ボタン、ザグロスへの限定空爆はPKKも「想定済み」だ。主要幹部がいるカンディルは、PKKの最大拠点だ。しかし、トルコとまったく国境の接していないこの地域への攻撃の可能性は低い。
カンディルが温存されれば、結局、トルコが大騒ぎして越境攻撃しても、ゲリラはダメージを受けることはない。ここのトルコ軍機が飛来し爆撃をするならば、それはイラク領空を相当侵犯して、入り込むということになる。イラン国境と接していることもあり、地域の緊張が一気に高まるだろう。
トルコはどういう越境作戦案を立て準備しているのか−。あるいは、これはトルコ軍によるPKKへの揺さぶりにおわるのか。
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イラク・トルコ・イラン・シリアにまたがるクルディスタン。分断民族クルド人とは。クルド問題とその他の地域も取材中(坂本卓/アジアプレス)


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