取材映像の著作権は通常は個人にある
![]() 【取材映像をテレビ局で編集する刀川和也】 |
テレビ局との関係で留意しなければならない点に、映像の著作権がある。
通常、取材した素材の基本的な著作権は、取材者個人にある。
ただ、取材費をもらい、委託された取材の場合は、取材の成果物である素材はテレビ局に属する。
また、制作会社がテレビ局から制作を委託され、その仕事をフリーランスに割り振った場合も同様である。
アジアプレスの場合は、「著作権売り」は行わず、おもな映像は他のテレビ局でも発表できる余地を確保している。
「著作権」を手放すことを前提とした仕事は、たんなる「請負仕事」になってしまう。
テレビ局の補完的、下請け的な仕事はやらない、ということだ。
ただ、この場合はテレビ局から支払われる金額は「著作権売り」よりだいぶ安くなる。
番組での映像使用権(再放送も含む)はあっても、テレビ局は映像そのものを自由に使う権利を持つことはできないからである。
近年、著作権に関するテレビ局サイドの締め付けは厳しくなりつつある。
ネットでの放映や番組のビデオ販売などを視野に入れ、「コンテンツ」を確保しておきたいからだろう。
また再放送の回数を増やすことで番組枠を埋め、制作費を削減するという狙いもある。
おもな制作会社が加盟する全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)は著作権の問題で、NHKなどと交渉を重ねているが、仕事の発注先であるテレビ局との力関係で、立場は弱い。
フリーランスとテレビ局の関係
現在のフリーランスとテレビ局の関係を俯瞰した場合、付き合い方には3つのパターンがある。
第1は個人でテレビ局へ企画を持ち込み、単独で番組にかかわる場合。
これは相当な実績があるジャーナリストでなければ相手にしてもらえない。
テレビは雑誌と違って、「持ち込み」という形は少ない。
たまたま事件の現場を目撃したというようなスクープの売込みを除けば、ディレクターとの直接交渉が可能なジャーナリストは、広河隆一、土井敏邦、神保哲生などごく少数だろう。
2番目は、制作会社と契約をする場合。
制作会社の中には、ニュースをメインに番組制作を行っているところもあり、その会社と契約を結ぶ。
長井健司とAPF通信社、アフガンやイラク報道で有名な遠藤正雄と日本電波ニュース社の関係は基本的にこのケースに分類される。
北朝鮮報道などで気を吐くジン・ネット社(高世仁代表)なども、フリーランスに対して随時、契約に近い形で仕事を委託、プロデュースしている。
3番目は、フリーランスが自ら組織を作って、テレビ局と交渉する場合。
アジアプレスやジャパンプレスがこれに該当するが、類似のグループは少ない。
それぞれのジャーナリストたちの映像作品のプロデュースや出演交渉は、組織の代表が行う。
テレビ局からの報酬
ここでテレビ局から支払われる報酬について少し触れておきたい。
まず、ビデオ映像を素材で売るときの料金は、アジアプレスの場合、1秒あたり3000円を基準にしている。
例えば、ニュース番組で1分間映像を使えば18万円ということになる。
特集などで使用する時間が長くなる場合は、グロスで値段を決めることもある。
ただ、同じニュースといっても、早朝から、昼、夕方、夜のメイン・ニュースまで、番組によって予算が違うので、その都度交渉することになる。
また、スクープ性の強い映像や難易度の高い取材の場合も、別途話し合いとなる。
一見、映像素材の値段は高いように思えるが、ニュース価値のある取材には時間とカネがかかっている。
前出の玉本英子の例で示したが、実際はイラク取材でも、赤字となるケースの方が多い。
この料金でも決して「儲かっている」わけではない。
ドキュメンタリーの場合は、NHK・BSで50分程度の完パケ(仕上た状態で納品)が一千数百万円。
この中から取材費、人件費など、編集、仕上げまでのすべて経費を差し引いた額が利潤となる。
長期の海外取材を伴う場合は、この金額でも採算ギリギリで、時には赤字になることも覚悟せねばならない。
民放の場合はフリーランスが関われるドキュメンタリーの枠はほとんど消滅しており、深夜枠で残っている番組も制作費は150万円から300万円ほど。
これでは採算が取れそうもない。
敬称略 〜続く〜




