トップ > 執筆者別 > 坂本卓 > 坂本卓のクルディスタン日誌〜トルコ軍イラク越境〜分裂しつつあるPKK

坂本卓のクルディスタン日誌〜トルコ軍イラク越境〜分裂しつつあるPKK

■トルコ軍イラク越境〜分裂しつつあるPKK


APN_sakamoto_080223_001.jpg
【整列するPKKゲリラ。後ろの山の向こうにはトルコ国境がひろがる(2006年撮影/ハクルク/イラク・クルディスタン)】(撮影:玉本英子)

トルコ軍がイラクに越境した。昨年末からトルコ軍は空爆作戦を数度にわたって継続してきたが、今回、ついに大規模な地上兵力を投じて越境攻撃に踏み切った。

「イラクへの限定空爆はあっても兵力越境は雪どけ後の春までない」と、昨年の段階では自分では予想していた。(過去記事 07/10/20) これは結局、間違いとなってしまった。

PKKゲリラ拠点のほとんどは、深い雪に覆われた山岳地帯だ。トルコ軍は通常、大規模掃討作戦は空爆を除いて春先におこなうことが多かった。

雪中での作戦は軍にとって不利だからである。ゲリラもそう読んでいたところに、不意をつく作戦だったのか−−。

越境攻撃に対する抗議行動は、トルコ南東部だけでなくイスタンブールなどの各地の都市部でも広がっている。親クルド政党DTP(民主的社会党)は攻撃の中止を求めている。

トルコ国内のクルド人知識人や親クルド政党DTP(民主的社会党)の幹部はこう見る。いま、PKKは2つに分かれつつある。オジャラン議長派と汎クルディスタン派だ。

オジャラン派はいうまでもなく、アブドラ・オジャランへの忠誠を誓うグループ。PKKは、オジャラン絶対主義が組織を統制し、強固にしてきた。


APN_sakamoto_080223_002_map.gif
一方、汎クルディスタン派というのは、イラク戦争後の南クルディスタンの新状況をうけ、勢いを増すバルザニをはじめとしたイラク・クルディスタンの影響を受けつつある勢力だ。ただし、明確にバルザニ支持というわけではないので、現時点では「バルザニ派」と規定することはできない。

いま、PKK内部ではこの分派闘争が起きている。DTP内部でもこれはかなり影響を及ぼしているようで、例えば、レーラ・ザーナは、汎クルディスタン派ということになるらしい。

トルコ軍にとっては、じつは「過激で暴力的なテロ」をくり返すオジャラン派のほうが、都合がいい点がいくつもある。EU加盟問題や穏健イスラム政党の台頭などで軍の影響力が低下しつつあるなか、自身の存在意義を示す何かが必要となるからだ。

さらに、PKKがオジャランの指導下にある限り、国内のクルド人の動きをある程度、コントロールできる。
むしろ汎クルディスタン派のクルド人がトルコで台頭すれば、バルザニの影響力を受けることになってしまう。「そのほうがトルコにとっては危険」とみなす人間はトルコ政府部内に相当数いる。

一連の攻撃は、トルコ政府内への軍の影響力維持につながり、またPKKをオジャラン派にひきつけておくことを狙っている。これがどこまで現実味のある話かどうかは別にしても、PKKがこの数年間、党内で粛清をおこなってきたのは事実だ。これをうけるようなかたちで、DTP内部にもオジャラン派と汎クルディスタン派が存在しはじめていることは見ておくべきだろう。

<<前 | 次>>
***********************************
イラク・トルコ・イラン・シリアにまたがるクルディスタン。分断民族クルド人とは。クルド問題とその他の地域も取材中(坂本卓/アジアプレス)


トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://gs820.ggsv.jp/~w820014/mt33/mt-tb.cgi/2225

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前に当サイト管理者の承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

yoshida_side.gif yoshida_side.gif yanagimoto_APN__banner005.gif ogura_side.gif ooba_APN_banner004.gif sakamoto_side.jpg tamamoto_side.gif sakamoto_side.jpg

記事分類

イベント・最新番組・映画
更新履歴