■シェヒッド・ナミリン(烈士は死なない) 1
![]() 【戦死した同志を「捧げ銃」で追悼するPKKゲリラ。この儀式イシュティマは整列点呼の際に必ずおこなわれる】(2001年/カンディル/イラク・クルディスタン/撮影:坂本卓) |
トルコ軍は昨年末からの攻撃以来、「PKKテロリスト100人以上を殺害」と発表してきた。一方、PKK側は、被害はない、としている。
PKKは2月末からの9日間にわたるイラク越境攻撃だけで125人のトルコ兵を殺害したと発表しているが、ゲリラはいったい何人が死亡したのか、負傷したのか明確にはしていない。ゲリラ側の被害はどこまで甚大なのか。
戦死したゲリラは、シェヒッドとよばれる。もともとはアラビア語源で、戦争や宗教的に殉じた人、あるいは、公務で命を落とした者もシェヒッドとなる。敵の攻撃で犠牲となった子供でもシェヒッドとされる。
トルコ語ではシェヒット(Şehit)となり、軍のキャンペーンや追悼式にも「シェヒットレル・オルメズ」(殉死者は死なない)という言葉が持ち出される。戦死した英霊の魂は滅びはせず、生き続ける、と解釈すればわかりやすい。
この「シェヒットレル・オルメズ」Şehitler Ölmezを、PKKはクルド語にそのまま置き換えて、シェヒッド・ナミリン Şehid Namirin という表現を用いる。PKKがシェヒッドという言葉を使うとき、それは、革命闘争に命をささげて殉じた者という意味合いが強く、「烈士」という言葉が相当するだろう。
![]() 【イラク北部カンディルのPKK拠点に建てられたゲリラ追悼墓地の慰霊塔。トルコ軍の空爆の標的となった】(FILE/2003年/シェヒットハルン/カンディル/イラク・クルディスタン/撮影:坂本卓) |
突然、その知人の親戚の女性がやってきた。
18才の息子にトルコ軍の兵役の呼び出し状が届いたが、息子は、兵役には行かず、PKKのゲリラになりたいと言い出した、という。
「なんとかとめてほしい」
母親は、涙ながらに知人に訴えた。
英雄主義やロマンチシズムで語られるほどゲリラとして戦うということの現実は甘くはない。それは、命令一つで人間の命を奪い、そして、その命令はときに、自身の命を投げ出すことも求めるよう人間を変えてしまう過酷なものだ。
およそすべての戦争とは、つまり殺し合いであり、命の奪い合いだ。その理由が、国のため、民族のため、家族のためであろうとも、殺し合いは殺し合いだ。そして、悲しいかな、その繰り返しが人類の歴史であった。
単純な武器しかもたないPKKゲリラは、戦死者がすさまじく多い。この20年で、のべ1万のゲリラが死んだともいわれる。それでも、彼らが信じる「大義」のために、参加してくる若者たちはあとをたたなかった。
「クルドの名の下に、PKKは死ぬことを求めるかもしれない。時には女性や子どもの命をおまえが奪うことにもなるんだぞ。PKKのそうした現実も知っておくべきだ」
ディヤルバクルの知人は、青年に説得を続けた。青年はそれを黙って聞いていた。
だがその後、彼は家族のもとから失踪し、ゲリラのいる山に向かったという知らせが入った。
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イラク・トルコ・イラン・シリアにまたがるクルディスタン。分断民族クルド人とは。クルド問題とその他の地域も取材中(坂本卓/アジアプレス)





