![]() 清津駅前で列車を待つ人々(2005年5月 リ・ジュン撮影) |
■写真について
本誌に使用している写真の大部分は、北朝鮮内部に住む「リムジンガン」記者たちが撮影したビデオ映像から起こした静止画像である。
北朝鮮内部で実際に記者たちが取材活動をしていることの強い証拠だと言えるだろう。
その他に、1998年からの数年間に、北朝鮮内部に住むアジアプレスの取材協力者が撮影した静止画映像が含まれる。
また、アジアプレスの北朝鮮取材チームが北朝鮮の内部や朝中国境で撮影したものと、資料写真が一部ある。
■北朝鮮の言葉と、コミュニケーションの特殊性について
(韓国で発売された朝鮮語版の凡例に書かれたものをそのまま掲載する)
本誌の朝鮮語版では、基本的に北朝鮮で使われている単語、分かち書き、用語、言い回しをできるだけそのままで掲載している。
多くの韓国人の読者からは「読みにくい」という声が編集部に届いているが、北朝鮮語を基本とする編集方針は維持していくつもりだ。
その理由は、まず何よりも、北朝鮮のことを理解してもらうことが目的の雑誌であるので、普段北の民衆がどのような言葉遣いをしているのか、韓国人にも実感してほしいからである。
北朝鮮情報雑誌や専門インターネット新聞は数多く存在するが、その多くが、北朝鮮内部の情報を集めた後、韓国人の視点によって整理要約編集されたもので、北朝鮮社会の空気や匂いを想像、実感しにくいものとなっている。
もちろん、それらの媒体も北朝鮮内部情報を世界に伝える重要な役割を担っているのだが、メディアごとに目的と性格が異なってしかるべきであろうから、「リムジンガン」は、多少のとっつきにくさはあっても、北朝鮮語使用の原則を続けていくつもりだ。
北朝鮮で、あるいは朝中国境で北住民を対象に取材しようとした時、取材対象者の発言の多くが、文章として不完全であったり、意味不明な表現になっている。
表現が極度に統制されているため、意思の表現が「以身伝心」的にならざるを得ないのだ。
南北の巨大な思想文化的、制度的差異は北から南へ直接意思を伝えるに当たり、大きな障害となっている。
原文をできるだけ生かすようにしつつも、このような点も考慮しながら、脚注や説明を丁寧にして、読者の理解が増すように努力していくつもりである
■記者たちの安全問題について
「記者たちは危険ではないのか?」
多くの人に尋ねられる。
「もちろん、非常に危険である」
北朝鮮の現状を考えると、こう答えるしかない。
見る、聞く、話す、移動することのすべてを厳しく統制している北朝鮮にあって、彼/彼女たちの取材活動は、あえて火中の栗を拾うようなものである。
さらに、取材した成果物であるビデオテープや原稿を、密かに外部世界に届ける行為は、北朝鮮の権力によって「反国家犯罪」「スパイ行為」とみなされるだろう。市場で食事をしている光景を撮った写真も北朝鮮では国家機密扱いなのだから。
それでも、あえて危険の中に飛び込んでいく「リムジンガン」の記者たちの行動力の源となっているのは、「世界に知らせたい」「少しでも朝鮮をよくしたい」という意志である。
「リムジンガン」が成長して、世界中で多くの読者を獲得し、北朝鮮の内実が伝えられていくにつれ、北朝鮮政権の反応は激しくなって行くだろう。
発表された記事や映像に対して、古今東西の強権政権がそうしてきたように、「謀略」「捏造」「スパイ活動」のレッテルを張るに違いない。「リムジンガン」編集部を、「日米帝国主義勢力に操縦された反朝鮮分子」と非難するかもしれない。
しかし、私たちが動じることはない。淡々とジャーナリズム活動を続けるのみである。
私たちにとって重要なのは「ファクト」(事実)である。
北朝鮮当局が非難のトーンを上げれば上げるほど、それは、私たちの取材によって北朝鮮内部の新しい事実と本質が明らかになった証左となるだろう。
そのような反応を北朝鮮当局が見せるなら、それはジャーナリストにとっての勲章だと言っていもいい。
北朝鮮政権に罵詈雑言を浴びせられることを、私たちは一向に厭わないが、やはり心配なのは、北朝鮮内部の記者たちの安全である。
北朝鮮政権は、血眼になって我が記者たちを探し出して捕えようとするだろう。
記者たちの安全のために、私たち外部にいる者は最大の注意を払っている。
各記者の個人情報は言うまでもなく、リポートの発表にあたって、その内容によって特定されないように細心の注意を払っている(そのため、記事中で、取材の場所や時期を、事実を損なわない範囲でカモフラージュしている部分があることをご理解いただきたい)。
それでも、100%の安全はありえないだろう。そのことを分かりながら取材を続けるか否かは、内部の記者たちの判断である。
「私たちは、たとえ捕まるようなことがあっても、決して自分の行動を後悔しないだろう。どう考えても正義は私たちにある」
記者のリーダー格のリ・ジュンはこのように言う。
しかしである。万一、我が記者たちが、正当な取材言論活動を理由に拘束されたり、危害が加えられるような事態が発生したら、「リムジンガン」編集部はあらゆる手段を尽くして彼/彼女たちの救出に動く。
世界中のジャーナリズムと、朝鮮の民衆に心を寄せる人々、人権のため活動している人々に連携を求め、北朝鮮当局と妥協なく闘っ行く覚悟であることを、ここに明らかにしておきたい。
雑誌「リムジンガン」は、表現、言論から徹底して排除されてきた北朝鮮民衆が主体となっている。そのため、取材にも報告の内容にも未熟な部分が少なくない。
しかし、「民の心は天の心」と言うように、私たちはこの未熟さの中から、北朝鮮社会を変化させる力となる、「世論」を見つけることができるはずである。
内部で活動する「リムジンガン」記者たちが、北朝鮮の人々の本心を記録しようと取材のたびに努力・工夫した結果、これまでの北朝鮮社会では表現が困難であった鋭い発言が飛び出している点も見逃さないでいただきたい。
「リムジンガン」の各記事の中には、北朝鮮の人々の切実な願いが溶け込んでいる。その願いに想像力を働かせていただければ幸いだ。
(おわり)












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