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人が“資源”と呼ばれる時代に (3) (吉田敏浩)

人が“資源”と呼ばれる時代に
 「人的資源」の発想が奪う命と尊厳

第1章 自殺した自衛官とその両親が訴えるもの

3.自衛隊への不信から裁判へ

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【自殺した自衛官の遺影の前で裁判資料を読む両親】
しかし、この報告書は「さわぎり」乗員の話を中心に作成されており、いじめがあったという遺族の話は反映されていない。あくまでも自衛隊の内部調査だ。

秋雄が技能不足だったとの結論も、いじめの当事者とされる班長などの評価を元に出されている。
関係者のプライバシーを理由にした白塗りの不開示部分も多すぎる。

「遺書はなかったとされていますが、私たち遺族にとっては信じられないのです」と言って、母親の佳子が指摘するのは、遺留品の取り扱いに関する自衛隊側のずさんさである。

自衛隊に関する防衛庁(省)訓令のひとつ「隊員の分限、服務等に関する訓令」第22条には、次のような規定がある。

「部隊、艦船等の長は、隊員(艦船内にある隊員以外の者を含む)が死亡し、又は所在不明になったときは、遅滞なく、本人の親族、友人その他適当な者2名以上を立ち会わせて、その遺留品を取り調べたうえ、遺留品目録を作らなければならない」

ところが、遺族が「さわぎり」に乗艦して遺体と対面した11月9日、遺留品は遺族の知らぬまにすでに自衛隊側によってまとめて段ボール箱に詰められ、遺族送迎のマイクロバスに積まれていた。

明らかに、親族の立ち会いのもとに遺留品を取り調べるという規定の主旨に反している。
遺留品とともに遺留品目録も遺族に渡さなければならないのに、それが渡されたのは1週間後であった。

しかも、手帳など遺留品の一部が遺族に知らされぬまま警務隊に保管され、遺族に渡されたのは1間後だった。
遺書が書かれていた可能性もあるその手帳は、4ページ分が切り取られていたのだが、報告書では、

「手帳に関しては、遺書の捜索で数人が扱っているが、誰もページの欠落には、気づいておらず、遺族の抗議を受けて初めて知ったのが実状である。したがって、手帳のページが破られていることについて、いつ、誰が、何の目的で破ったのかは究明できなかった」として、曖昧なままである。
この「遺書の捜索」も乗員によるもので、遺族が立ち会っていたわけではない。

さらに秋雄が乗っていたバイクのキーが、遺留品のなかに見当たらず、目録からも漏れていた。遺族が再三問い合わせたにもかかわらず、3週間もの間、所在が不明だった。
しかし実際は、自衛隊側が保管していたのである。

放置バイクにならないよう基地の駐車場から官舎に移動させるためで、遺族に渡すのは忘れていたと、後で説明されたが、手帳の件と同じように遺族の疑念は解けていない。
遺族としては、バイクに付いた収納箱に遺書のようなものが入っていたかもしれないと考えずにはいられないのである。

このように遺留品をめぐる自衛隊側の処置と対応は、遺族の不信感を募らせた。
また、仮通夜と通夜の席で、遺族は複数の「さわぎり」乗員から、艦内でいじめがあったことを聞いている。
だが報告書は、いじめはなかったと断定しており、それを遺族は自衛隊側の一方的な決めつけで、もの言えぬ死者にすべて責任を負わせようとするものだと受けとめた。

こうした自衛隊側の姿勢は遺族の心を傷つけた。
そして、鈴木夫妻は憤りを覚えるととも
に、人の命の重さよりも組織の論理を優先させる自衛隊の閉鎖的な体質をそこに感じとった。

「希望を抱いて入った自衛隊で心を傷つけられ、自殺は本人が無能で弱かったせいだと決
めつけられた息子が不憫でなりません」(佳子)

「教育隊の入隊式で、司令が『大切なご子息をお預かりしますが、必ず立派な自衛官・人間に育てるのでご安心ください』と話されたことを覚えています。この約束はいったいどうなったのでしょうか。これまで何の釈明もありません。自衛隊は育てるどころか、息子は周りから心をずたずたにされて、命までも断たれてしまいました」(洋二)

当初は、自衛隊に対して裁判を起こすことなど念頭にもなかった夫妻だが、2001年6月7日、国を相手取って真相究明と謝罪と1億円の慰謝料などを求め、長崎地方裁判所佐世保支部への提訴に踏み切った。 〜つづく〜
(文中敬称略)
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