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ico_new.gif人が“資源”と呼ばれる時代に (4) (吉田敏浩)

人が“資源”と呼ばれる時代に                          
 「人的資源」の発想が奪う命と尊厳

第1章 自殺した自衛官とその両親が訴えるもの

4.組織の視点に立った判決

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【護衛艦「さわぎり」の母港、海上自衛隊佐世保基地】

裁判で原告側は、「自衛隊内のいじめで精神的に追いつめられて鬱病になり、自殺に至ったことは、その言動からも明らかで、何ら対策を取らなかった自衛隊は安全配慮義務違反だ」と訴えた。

また、いじめを無くし、自衛官の人権を保障するためには、ドイツなどのように議会に属し強力な監察権を持つ軍事オンブズマン制度を導入し、外部から閉鎖的な体質を変えていく必要があるとして、同制度の創設を求めた。

「息子と同じような犠牲者が出るのを繰り返させないために」と佳子は言う。

一方、被告の国側は自衛隊の報告書を根拠に、「いじめの事実はなく、本人が技能不足に悩んだ末に自殺したもので、その言動も自殺を示唆するほどではなく、自衛隊側に安全配慮義務自体が存在しない」と主張した。

いじめの当事者と目された班長ら「さわぎり」乗員も証言台に立ったが、口々に「いじめ
はなかった」と語った。

公判やその他の手続きがある度に、夫妻は宮崎から佐世保に車で通い、4年間で23回に及んだ。
膨大な裁判関連の書類や自衛隊関係の新聞切り抜きなど資料ファイルも増え続ける。それらは、息子の遺影を飾った仏壇のある自宅の居間に、整理して並べてある。

2005年6月27日、判決が言い渡された。その要旨(人名だけ仮名に変えた)は以下の通りで、原告である両親の請求は棄却された。

「上官らに一部、鈴木秋雄を侮辱し、ばかにする不適切な言動があった。鈴木は上官らの発言によって精神的苦痛を感じていたと推察される。しかし、鈴木の仕事上の実力は芳しいものではなく、自衛隊員として艦の安全航行に関わる重要な作業をおこなう立場にある関係上、ある程度の厳しい指導・教育にさらされるのはやむをえない」

「上官らの不適切な言動も含めた指導・教育の過程を全体としてみる限り、社会的に相当な範囲を逸脱しているとまでは言えず、違法・不当ないじめ行為があったとは認められない」

「自己の能力不足を嘆く鈴木は、上官らによる厳しい指導・教育が続くなかでストレスを募らせ、慢性的な睡眠不足の状況下、過剰ともいえる勉強を繰り返した結果、精神的疲労を募らせた。演習航海に出たことによる精神的な圧迫感や閉塞感も手伝って、精神的な疲弊状態を一層悪化させ、自ら命を絶ったと推察される」

「鈴木の様子から自殺の可能性があることまで予見するのは困難で、上官らに自殺を防止すべき安全配慮義務違反があったとは言えない」

判決後、防衛庁(現防衛省)は「防衛庁の主張が認められ、裁判所の理解が得られたものと評価している」というコメントを出した。

判決では、上官らの「不適切な言動」が指摘されながらも、それが「厳しい指導・教育」の枠内に位置づけられ、いじめの存在は否定されている。

しかし、「厳しい指導・教育」というが、される側の当人がいじめだと深刻に受けとめていた点からして、職務上の地位を背景にしたパワーハラスメントの一種ではなかろうか。

これでは、当人の気持ちを無視して、個人を歯車のように使う組織の側の視点に立った判決だとしか思えない。
技能不足という点についても、自衛隊側の主張ばかり取り入れられた結果の判断ではないか。


「とても残念な判決です。自衛官一人ひとりが人間として大切にされていません」(佳子)

判決に納得できない両親は、2005年7月、福岡高裁に控訴した。

〜つづく〜 (文中敬称略)

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