連載 (4) امرأة انتحارية ![]() 【ドンッという鈍い音とともに上がる自爆攻撃の煙。身体に爆弾を巻きつけたものや、自動車に大量の爆薬を積んで突入するものなどさまざまだ】(2007年/バグダッドで/坂本卓) ![]() 【2005年ヨルダンでの連続自爆攻撃で逮捕されたイラク人女性サジダ・アル・リシャウィ。腹部の自爆ベルトが作動せず未遂に終わるが殺傷力を高める数百ものベアリング鉄球が仕込まれていた。夫は別の場所で自爆死】(ヨルダンTVが公開した映像) |
エムラア・インティハリーア 「女性の自爆攻撃」 |
イラクで女性の自爆があいついでいる。エムラア・インティハリーアとは、そのままでは「自殺する女性」となるのだが、イラクでは、「女性の自爆攻撃」そのものを指して使われるようになった。
ほぼ毎週起きる自爆事件の一割にも満たない数ではある。しかしアバヤという黒い布で全身を覆った女性は検問でもチェックがあまく、「成功率」も高い。
イラク人にとって「自爆攻撃」などという言葉は、パレスチナとか、どこかよその国の出来事であった。2003年4月にイラク女性の車両が検問で爆発したのが最初の女性の自爆とされ、このときは車に仕掛けられた爆弾が爆発している。身体に爆弾をまきつけて女性が自爆した事件がおきたのは2005年だ。
武装勢力は生活の不安定な未亡人を使ったり、薬物を投与したり、知的障害者を使うなどして女性の自爆を手引きしている。ゆえに、自爆の決意性という意味では、パレスチナやクルドPKKの自爆攻撃とは異なっている。
自爆のほとんどは、いまも外国人の男の義勇戦士によるものだ。過激組織と思想の流入で、イラク人のなかからも自爆をおこなうものがではじめているものの、いまでもイラク人は、「銃をもって戦うことはあっても、敵と戦うのに自爆を選択するというメンタリティーは持ち合わせていない」と言う。
知的障害者による自爆事件を、イラク政府がことさら強調するのは、こうした戦術をとる武装勢力のイメージダウンにつなげたいという思惑があるからだ。自爆といってもさまざまで、自分で自爆のスイッチを押す以外にも、爆弾を巻きつけて起爆は遠隔操作される例すらある。いずれもスンニ派女性によるものであり、シーア派女性は自爆攻撃はしない。
![]() 【自爆志願でイラクに潜入し、決行直前に逮捕されたリビア人】(2005年/撮影:玉本英子) |
![]() 【自爆攻撃の犠牲者】(2005年アルビル/撮影:玉本英子) |
自爆事件の現場は、あまりに悲惨だ。崩れたコンクリート塊と割れたガラスの破片。飛び散った肉片と、漂う火薬と血のにおい。泣き叫ぶ人びと。占領とはなんの関係もない市場や巡礼地での自爆を、普通のイラク人は支持してなんかいない。
それでも自爆攻撃が起きるのは、容易に標的に近づきダメージを与えることができるからだ。治安機関が取り締まりを強化するほど、武装勢力は正面戦よりも、自爆戦術を使うようになった。
100人を超える死傷者を出した28日のバグダッドでの連続自爆攻撃では、3人の女性が同時多発的に自爆をおこなっている。
いずれイラクでも決意性を持つ女性の自爆戦士が現れ、決行前にビデオで声明を読み上げるような映像を目にすることになるかもしれない。
<< 前 | 次 >>
坂本卓 「ことばで読み解くイラク」(1)「私はイスラム教徒、そしてイラク人」
坂本卓 「ことばで読み解くイラク」(2) 「来たれ ジハードへ」
坂本卓 「ことばで読み解くイラク」(3) 「グレンダイザー」
------------------------------------------------
坂本卓
クルドが専門で、アラブは専門ではありません。アラビア語は奮闘中ですが、コーランや文化の影響もあり、クルド語と同じ単語も数多く見られます。バグダッド滞在中にアジアプレス現地スタッフのモハメッドからアラビア語集中講座を受けるも、まだ道のりは長いです。このシリーズでは、これまでの取材とモハメッドからの情報をもとに、いまを読み解く「イラクのことば」を紹介します。
========================
【関連リンク】
特集 イラク戦争 アジアプレスが取材した”戦争の現場”
新しいイラク国旗をめぐって
バグダッド イラク軍従軍取材
***********************************
イラク・トルコ・イラン・シリアにまたがるクルディスタン。分断民族クルド人とは。クルド問題とその他の地域も取材中(坂本卓/アジアプレス)








