![]() 【闇市場を彷徨う女児。90年代大飢饉の最大の犠牲者は子供と老人だった。1998年10月 元山市 アン・チョル撮影】 |
いったい、今の北朝鮮の人口はどれぐらいなのだろうか?
現時点で北朝鮮政府機関が出している最新の値は、「朝鮮中央通信年鑑2007年版」に記述がある2361万人だ(04年、千人以下切捨て、以下同)。
他方、外国の機関は少し異なる推定値を発表している。韓国統計庁は2270万人(04年)、米国中央情報局(CIA)は、2269万人(04年)、2311万人(06年)、世界食糧計画国(WFP)2370万人(05年)である。04年の数値は約90万人、4%も差がある。いったいどの数値が実態に近いのだろうか?
北朝鮮が国連人口基金の支援を受けて人口センサス(人口住宅総調査)を実施したのは、1993年(94年初の実施)一回だけで、その他の公表値は登録人口調査に基づくものだけだ(100万人を超える軍人が含まれるか不明だという指摘もある)。
この93年コンサスの数値2112万人が、どこまで正確なのか不明だが、ひとまずこの数値を基点に見ると、北朝鮮の発表はもとより、韓国、CIAの推計値も、多いに問題がある。
93年コンサスと04年の値を比べると、韓国、CIAの値はともに約7.5%増えている。
両者とも大量の餓死者が発生した95−98年の期間ですら、人口は増加していると推定している。
90年代飢饉をひどく過小評価しているとしか思えない。
私は、この期間に北朝鮮では200万ー300万人が命を失ったと推定している。これは、93年コンサスの数値を基準にすると、人口の9.5%〜14.2%に及ぶ凄まじさである。
(私自身の96-00年の、朝中国境地帯における北朝鮮難民・越境者の聞き取り調査、韓国の仏教系NGO「よき仲間たち」の97-98年の中朝国境での大規模調査などによる)http://goodfriends.or.kr/eng/
外部世界の推定統計値とは裏腹に、北朝鮮内部では、今人口の減少が大きな社会問題になっている。
アジアプレスの北朝鮮内部取材によれば、例えば、軍隊では満17歳の入隊年齢に達する男子が激減して部隊編成に支障が出始めている。
学校の子供の数は、地域差があるが、80年代の半分から三分の一以下に減ったというのが、北朝鮮に住む人々の間では常識のように語られている。
今、10-18歳の世代は、飢饉がもっともひどかった95-98年が幼児期にあたり、人口の凹みがきわめて深刻だ。また、飢餓が沈静化した2000年以降も、生む子供の数は増えていないと思われる。
「食べて行くのがやっとなのに、どうやって子供を育てるのか」
という生活防衛意識は、90年代も今も変わらない。
1980年代には人口増抑制のため産児制限スローガンまで出していた北朝鮮は、今では逆に2人目の子供から配給を増やしたり、4人目を生むと「英雄母親」として表彰するなど、出産を奨励している。
一方で、堕胎を禁じ闇の手術を厳しく取り締まっている。
結論から言うと、今世界で流通している北朝鮮の人口推計値で信用できるものはひとつもない。
CIAの統計値も首をかしげたくなる。
1990年代の飢饉の間も人口が増えているというのはありえないことだ。
北朝鮮当局の発表数値に至っては、水増しという他ない。大量の餓死者を発生させるに至った無策無能を隠蔽し、責任を回避したいというのが人口統計操作の動機だろう。
さらに、北朝鮮の構造的な不正腐敗も水増しの原因だと思われる。
「住民人口や、洪水などの被災民の数を水増し報告するのは日常飯事。幹部たちが横領できる支援物資が増えるから」
とは、内部記者ペク・ヒャンが取材した清津市の地方政府幹部の弁である。
国連人口基金は、今年10月1日から15日の間に、北朝鮮全域で14万人の住民を動員して全戸を訪問し、家族構成、職業、個人所得などを調査する予定である。
しかし、指導サポートする国連要員はわずか10名ほどが予定されているだけだ。その上、国連要員が立ち入れない地域が山ほどある。
このまま北朝鮮当局任せのセンサス調査が行われれば、国連のお墨付きで統計数値が捏造されてしまうことになりかねない。
北朝鮮の産業復興や人道支援のためにも、正確な人口調査は欠かせない。国際社会の監視が必要だ。
(※北朝鮮の人口減少については、拙著「北朝鮮難民」 講談社現代新書を参考にされたい)





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