大村一朗のテヘランつぶやき日記〜日本製品は日本人に聞け 2009/01/13
![]() 【テヘランの電気街で見つけたパナソニックの看板。企業名もさることながら日本製であることが強調されている】(撮影:大村一朗) |
毎日の通勤には、職場の送迎車を使う。もちろん私専用のハイヤーなどではなく、幾つかの決められた通勤ルート上に住む職員たちを拾いながら職場に送り届けてくれる、乗り合いの送迎車である。
私が出勤する午前10時という時間帯は出勤者が少ないようで、いつも乗客は私とインドネシア人のふたりだけである。しかし、運転手はローテーションで各ルートを担当するのか、毎日違う顔ぶれだ。
今朝、私が車に乗り込むと、運転手が切り出した。なんでも彼が以前買った、テレビに設置する小型の薄型テレビが壊れてしまい、困っているという。その先は聞かなくても予想ができた。
「まず、箱に書かれていた代理店に電話してみたんだけど、どうも潰れちゃったみたいで、自分で修理できる場所を探してみたんだよ。けどLCDの小型テレビなんか修理できるとこはなかなかなくて、うちの職場の技術部にも頼んでみたんだけど、設計図がないと無理だって言われた。インターネットでそのメーカーのホームページを開いてみたんだけど、英語で書かれてて良く分からないんだよね。韓国のメーカーだよ。ほら箱にKOREAって書いてある。いやあんたが日本人なのは知ってるよ。でもうちの職場に韓国の部署はないからさ。どうしたもんかな。何か手はないものかなあ」
イランで生活していると、よく電化製品のことで赤の他人からものを頼まれる。日本から持って帰ってきた携帯電話が使えないから見てくれとか、親戚から譲ってもらった日本製のFAXの使い方が分からないから家に来て教えてくれとか、どうみても日本製とは思えない、「MADE IN JAPAN」とわざとらしく書いてあるステレオを、日本人なんだから修理できるだろと言われたりする。以前、まだペルシャ語の教室に通っていたとき、わざわざイラン中部の都市イスファハーンからやってきたという男が、学校の門の前で日本人が現れるのを待ち構えていて、懇願されて仕方なく、彼の日本製の冷蔵庫の様子を見るため600キロ離れたイスファハーンまで出かけたこともあった。
しかし、彼らの頼みごとの多くは、どだい素人では歯が立たないものがほとんどだ。大抵は何一つ解決せず、相手を失望させるだけで、感謝すらされない。
そうした経緯から、私は正直、「韓国製品のことまで責任持てるか」と口から出掛かっていたが、それをぐっと飲み込んだ。こういうとき私は、友人が教えてくれたシーア派初代イマーム・アリーの言葉を思い出す。
『頼みごとは、相手が申し出る前に引き受けてやるがよい。相手が申し出てから引き受けたのでは、美徳とは言えない。なぜなら、相手に頼みごとを言わせることで、相手を恥じ入らせてしまうからである』
その友人はこの格言通り、私が困っているときはいつも、私が助けを請う前に助力を買って出てくれた。それは確かに、こちらが頼んでやってもらうより、数倍も感謝の気持ちを抱くものだった。
だからという訳ではないし、この運転手が後で恥じ入るとも思えないが、ここまで言われては仕方がない。
「分かりました。とりあえず僕がメーカーのホームページを見てみますよ」
それだけで運転手はとても喜んでくれた。
その日、メーカーのホームページを開いてみると、会社の住所はアラブ首長国連邦のドバイになっていた。とりあえずメーカーにメールを送ってみたが、おそらく今回も大した役には立てないだろう。
相手を恥じ入らせはしなかったが、自分が恥じ入る結果になっては、これも美徳とは言えない。






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