ネパール~プラチャンダが流した涙の意味【小倉清子】

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小倉清子のカトマンズジャーナル~プラチャンダが流した涙の意味

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今日は朝から、双子の女の子をもつ友人宅に食事に招かれていた。わが家でもそうなのだが、一般のネパール人は朝食とランチを一緒にして、ご飯を10時前後に食べる。

明日は、外国人の友人宅のランチに呼ばれているのだが、こちらは午後1時に始まる。昨日は、近くのホテルで8時に朝食ブッフェをたくさん食べたあと、午後1時にランチ・ミーティング。

どうも、このところ、お腹の調子が良くないのは、食事の時間帯が一定でないためかと思い当たった。それほど多忙な生活を送っているわけでもないし、ストレスもあまり感じることがない生活なのだが、いろいろと無理が利かなくなってきたなと感じる今日このごろである。

さて、昨日も少し触れたが、制憲議会内にある委員会がネパール軍のカトゥワル参謀長を召集して査問をした。

そのときの録音テープが、さまざまなラジオ・ニュースで放送されていた。これを聞いていると、軍人の発言とは思えない“政治的発言”に満ち満ちたもの。「国軍を政治に介入させるな」と繰り返し言っているが、彼の発言そのものが政治的なのだ。「われわれは政府の指示に従う」と言ってはいても、流暢で演説風な物言いを聞いていると、この人は政治と政治家を見下しているのだろうかと思わず疑ってしまう。

タライでは、統一ネパール共産党マオイストを離れて、マトリカ・ヤダヴが発足させたネパール共産党マオイストに入る動きが活発化しているようだ。

やはりタライにあるジャパやナワルパラシ、ルパンデヒ、カピルバストゥでも、郡委員会レベルのマオイストが次々に党を離脱して、新グループを結成している。タルーだけではなく、タマンやライ・リンブーなど民族戦線のメンバーが、党方針に不満を訴えて離脱し、新グループを結成する動きもあちこちである。

一方、ピュータン郡シャウリバンの警察詰め所襲撃の犯行グループのなかにも、党に不満をもつ元マオイストが含まれているというニュースが今日のKantipur紙に掲載されている。

グループを結成したのは、ガム村に住む空手の元教師で、制憲議会選挙中にロルパで二人のマオイストを殺害した人物であることがわかっている。このグループに関しては、まだ不明の点がたくさんあるが、紛争中にマオイストから強制的に寄付を徴収されていた村人や、党に不満をもつマオイストの反マオイスト感情を利用して、メンバーを集めたのであろうことは想像がつく。

こうした危機を、プラチャンダはどれくらい真剣に理解しているのだろうかと思う。一昨日のナワルパラシの式典での様子を見ていると、党内からの批判の対象となっている生活様式(家族・親類に対する偏愛傾向やぜいたくな暮らしぶり)をダハル首相は一向に変える気はないのかなと思う。

式典のあいだ、ステージの上を何人かの小さな子供たちが、スナック菓子を手にもって、うろうろしている光景が目に付いた。この子供たちはまるで“国王の孫たち”のように、横柄に振舞っていた。誰も叱る人もおらず、リーダーが演説をしているあいだも、したい放題である。私は席がなかったために、床に座ってこれを見ていた。もうお分かりと思うが、この子供たちはダハル首相の孫である。

他の政党の政治集会で、こうした光景を目にすることはない。首相の家族はもちろん、国費を使って(ヘリコプターで)来たのだろう。

ダハル首相は演説のなかで「私はバルワタール(首相官邸)で犠牲になる用意がある」と話したときに、感情的になって涙を流していたが、誰のために流したものなのか、大いに疑わしい。

自己愛の表出なのかと疑ってしまう。国民の状態や党の状態を本当に心配して流した涙なのであれば、まず、自身が変わるべきである。でなければ、彼が話す言葉も涙も偽物にしか思えない。

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小倉 清子
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ネパール王制解体
- 国王と民衆の確執が生んだマオイスト


 著者:小倉清子 
 出版:日本放送出版協会 
 定価:1218円(税込)
 <2007年1月刊>

 13年にわたる現地取材により明かされるマオイストの真実の姿。政府軍の空爆下、マオイストの拠点であるタバン村に赴くなど、命がけの取材を敢行し、党首プラチャンダはじめ、幹部、コマンダーへの徹底した聞き取りを実行。
 また90年代の民主化運動から継続的にネパールを見続けてきた経験をもとに、王政崩壊の新局面を迎え、激動するネパールの現在を鮮烈に描く。

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