ネパール 竏秩@混沌のなかで(2009/12/03)【小倉清子】

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混沌のなかで(2009/12/03)

政治は一歩も前進していない。むしろ、後退していると言っていい。ネパール首相とこの政府には、問題を解決しようという意志がまったくないようだ。ネパール首相は、自身の地位の維持が最重要事項という、これまでの大半の首相と同じ病気にかかっている。

主要3政党のトップはいずれも、党をコントロールする力を失いつつある。唯一の解決法と見られていたトップ・リーダーによる「ハイレベル政治メカニズム」は、インド、そしてNCの反コイララ派、UMLの反カナル派の妨害にあって、発足する可能性が日に日になくなっている。

マオイストは12月11日から18日のあいだに、全国で13の“人民共和州”の樹立を宣言することになっているが、与党はその批判をするばかりで、解決のための話し合いを始めようともしない。

いや、首相は話し合いを呼びかけたが、合意の可能性が見えないためか、マオイスト側は応じる姿勢を見せていない。人民共和州樹立の宣言は、制憲議会の解散を望む勢力に、彼らの主張に対する正当性を与えることにもなりかねない。

現状のなかで、唯一の解決法は、与党が大統領問題でマオイスト側に譲歩する代わりに、マオイストが現政権に入閣することである。しかし、今の状況を見ると、その可能性は低い。

こんな状況のなかですが、明日からまた更新ができない状況になります。次の更新
は12月15日以降となりますことをご了承くださいませ。

写真:ナガルコットのホテルから見えたヒマラヤの山々と、私の好きなマリーゴールドの花

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またも、UML内部の対立(2009/11/28)

「マオイスト抜きで新憲法を作ることはできない」。誰が考えても当たり前なことが、統一共産党(UML)の政治局メンバーの過半数にはわかっていないようだ。1週間前から始まったUMLの政治局会議で、ジャラナス・カナル党首がこう発言したところ、K.P.オリ派のメンバーから一斉に批判の声があがった。ネパール首相までが「党内にマオイストの尻尾になった人がいる」と、カナル党首を批判する発言をしている。

カナル党首は会議で公にした提案書のなかで、新憲法を期限内に制定するために、現在の政治問題を解決するためには、UMLは首相の席を他党に譲る覚悟でいるべきだとする意見を明らかにした。これを、オリ派のリーダーは「マオイストに降伏する行為」と理解して、会議ではカナルとその支持者が強く批判されているという。

最近の与野党リーダーのやり取りを見ていると、カナル党首が最もまともな事を言っている。カナルの発言の真意は「今は細かなことにこだわらずに、新憲法の制定に専念すべき。来年5月までに憲法ができなかったら、この国は大変なことになる」ということ。

以前も書いたが、これは現在のネパール政治の唯一の明確な真実である。しかし、マオイストを含めた大半のリーダーは、この真実を直視しようとしていない。カナルの言う「細かな事」には政府を主導することも含まれる。しかし、党内の反対派には、これが「マオイスト支持」の発言と映っているらしい。

UMLの政治局内ではオリ派が過半数を占める。政治局会議では、カナル党首の提案とは反対の「反マオイスト方針」が可決される可能性が高い。その場合、まもなく発足されると騒がれているハイレベル・メカニズムの権威も下がることになるだろう。

それにしても、制憲議会選挙で2度も敗れたネパール首相の地位に対する執着が、次第に醜く見えてkる。2つの選挙区で圧勝したプラチャンダが、いとも容易に首相を辞任し、2つの選挙区で負けたネパールがここまで首相の地位に執着するとは、何とも皮肉なものである。

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信じるべきか…?(2009/11/26)

ヒマラヤの山々が一番きれいに見える季節である。先週末、女性ジャーナリストの仲間たちとナガルコットに1泊してきた。幸いなことに、雲一つない青空に、完璧な日の出を見ることができた。

今日は某所から戻る途中、三角形の影のようなエベレストを見ることができた。山頂にあまり雪がないように見えたのは気候変動のせいだろうか。それとも、いつもこうなのだろうか。ナガルコットでは、火を囲んで深夜まで女たちだけでおしゃべりを楽しんだ。こうした瞬間が一番楽しいと思う。

一昨日の日刊紙Nagarikが、気になる事をトップ記事で掲載していた。政府が、国家人権委員会の調査に基づいて、紛争中に起こった違法殺害や人権侵害に関係した軍関係者や警察、そしてマオイストの合計100人以上を告訴することを決定したと言うニュースである。他紙にはこの記事はなかったし、その後の追加記事もないことから、同紙のスクープか、あるいは何らかの意図をもってリークされた情報に基づいて書かれた記事なのだろう。
 
告訴される人のリストには、現在、ネパール軍のナンバー2の地位にあるトラン・ジャン・バハドゥル・シンや、警察高官のクベル・ラナらも含まれる。シンはバンダリ国防大臣が以前から昇進させる許可をネパール首相に要請してきた将軍である。

しかし、バイラブナス大隊で40人以上が集団で行方不明者になったケースに関わっているとして、外交サークルや国連の人権高等弁務官事務所が昇進をしないよう政府に圧力をかけてきた。他に、無実の10代の少女マイナ・スンワルさんの殺害や、カリコット郡の飛行場建設現場で、30人を超える建設労働者が治安部隊に集団で殺害されたケース、そして、チタワンでマオイストが仕掛けた地雷にかかってバスに乗っていた40人以上の一般人が死亡したケースに関わった人たちが起訴されると記事にはある。

告訴されれば、シン少将の昇進はなくなるどころか、定職処分を受けることになる。決定された閣僚会議には国防大臣は欠席していたと記事にはあるが、他紙にこれに関する報道がまったくないことが気になる。

ネパールのメディアでは、意図的に誤った情報や極秘情報が流されることが頻繁にある。今年4月のKantipurに掲載されたネパール軍の“ソフト・クーデター”の記事が好例である。真実であれば、画期的なことであるが、すべてを信じることは、まだできない。

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小倉 清子
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ネパール王制解体
- 国王と民衆の確執が生んだマオイスト


 著者:小倉清子 
 出版:日本放送出版協会 
 定価:1218円(税込)
 <2007年1月刊>

 13年にわたる現地取材により明かされるマオイストの真実の姿。政府軍の空爆下、マオイストの拠点であるタバン村に赴くなど、命がけの取材を敢行し、党首プラチャンダはじめ、幹部、コマンダーへの徹底した聞き取りを実行。
 また90年代の民主化運動から継続的にネパールを見続けてきた経験をもとに、王政崩壊の新局面を迎え、激動するネパールの現在を鮮烈に描く。

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