ゼネスト初日(2009/12/20)【小倉清子】

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ゼネスト初日(2009/12/20)

静かな日曜日である。道路を走る車もなく、学校も休校、商店も閉まっている。しかし、屋上から市街を眺めると、ナヤバネスワルの方向で、数箇所から黒い煙が上がっている。マオイストが路上で古タイヤを燃やしているのだろう。

今日はマオイストによるゼネストの初日。主要政党間で合意が成立しなければ、明日・明後日もゼネストが続くことになる。昨日まで、3政党のトップが2者会談を開いて合意成立を試みたが、成らず。マオイストは「平和的ゼネスト」を決行することを決めた。

今日はネパール首相がコペンヘーゲンから帰国したが、首相の公用車が通れるようにするために、ナヤバネスワルで警官隊とマオイストが衝突した。警官側とマオイスト側に数十人の負傷者が出たと伝えられている。結局、首相は別のルートを通って首相官邸に行ったようだ。

一昨日、一時は「合意近し」と伝えられたが、やはり期待は裏切られた。今朝のFMラジオでバブラム・バッタライが語った言葉を借りると、現状では「合意の可能性はない」ということである。

自治州樹立の宣言といい、このゼネストといい、外部からの強い批判にもかかわらず、抗議プログラムを決行しているマオイストは、すでに「和平プロセス崩壊後」、つまり、「制憲議会解散後」を見越して、自組織の強化を務めているのだろうかという疑問が浮かぶ。

彼らはすでに、近い将来に起こる可能性がある「対立」に備えて、こうした活動を続けているのだろうか。与野党のトップ・リーダーたちは、一歩一歩崖の淵に向かっているこの動きを止める試みを、すぐにも始めるべきである。

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マイナさんへの正義はどこに(2009/12/19)

紛争中、マオイストの容疑で王室ネパール軍に拘束されたあと、カブレにある軍の敷地内で拷問を受けて殺害された15歳の少女、マイナ・スンワルさんのことは、これまでにも何度か書いてきた。

アメリカ人の女性監督が制作したドキュメンタリー「Sari Soldier」のラストで、軍敷地内からマイナさんの白骨化した遺体が発見される場面は大変衝撃的なものだった。

その後、「正義」を求めて、国家と国軍という巨大な権威と闘ってきたマイナさんの母親デビさんは健康を害して入院を繰り返し、事件から精神的な衝撃を受けた父親は先日、カブレ郡で路上で死亡しているのが見つかった。紛争被害者が正義を求めた結果、いかに重大な見返りを受けなければならないかの典型的な例といえる。

マイナさんの殺害に関わったとされる軍関係者の1人にニランジャン・バスネット少佐がいる。バスネット少佐は軍事裁判で、マイナさんが逃げようとしたために発砲したという証言が認められて無罪とされた。

しかし、その後、少佐は民事裁判所に起訴されたにもかかわらず、ネパール軍は少佐を国連PKOのミッションでチャドに派遣した。この件がネパールのメディアで報道されると、国連はネパール政府に少佐を帰国させるよう指示。ネパール首相はこの指示に従って、バスネット少佐を帰国させた。

ところが、先週、バスネット少佐が帰国した直後、ネパール軍は少佐を空港から拘束していった。ネパール首相の警察への引渡し命令にも従わず、軍は今も少佐を拘束下においている。

国内外の人権機関がこうした軍の行為を強く批判しているが、軍側は「グルン参謀長が帰国するまでは、引渡しをしない」と主張。木曜日には、この問題がアメリカの議会でも取り上げられた。

インド軍の招待により、インド訪問中のグルン参謀長は、当地で破格の「大歓迎」を受けたと報道されている。「職業軍人」としてインドでも高く評価されたというが、ネパール軍最大の問題でもある“impunity(罪を犯しても罰せられない)”の問題に関して、現参謀長は前任者とどれだけの違いがあるのだろうか。帰国後の措置を見守りたい。

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暴走するマオイスト(2009/12/17)

今回、日本にいるあいだはネパールのニュースを一度も見なかった。どうせ、好転することはないだろうと予測していたからでもある。案の定、帰ってきて、たまっていた留守中の新聞を読むと、事態は好転するどころか、さらに混乱の度を増していた。

つまり、与党とマオイストの距離はますます大きくなっていたということだ。マオイストは昨日までに、すでに全国で10の自治州の樹立を“勝手に”宣言している。これは制憲議会や包括的和平協定のスピリッツに、明らかに反する行為である。タライでは、マオイストのバックアップを受けて、スクンバシ(土地のない人)の人たちが土地を占拠する活動が進んでいる。

ルクムでは、若い女性ジャーナリストのティカ・ビスタさんがマオイストに襲われて、瀕死の重傷を負うという事件があった。ビスタさんは、昨年から私がともに活動をしてきたWWJのメンバーでもある。

彼女は紛争のさなかにマオイストにより殺害された統一共産党のリーダーの夫人でもあり、議員を務めた政治家でもあるティルタ・ガウタムに同情的な記事を書いていた。彼女を襲ったグループは、この記事が理由で襲撃したことを彼女に告げている。

犯人グループは彼女の手をかみそりで切ったり、頭を石に打ちつけたりしたあと、彼女を崖から下に突き落とした。明らかに殺人の意図が見える犯行である。突き落とされたとき、彼女はすでに意識を失っており、関係者がたまたま彼女を見つけなかったら、命は助からなかったかもしれない。犯人グループはマスクをして顔を隠していたが、「犯人はマオイスト以外に考えられない」とビスタさんは週刊紙Jana Asthaに話している。

エスカレートするマオイストの活動を与党は批判するばかりで、問題を解決しようという意思がまったく見えない。

注目されていた統一共産党の政治局会議で、少数派となったカナル党首は、明らかにオリ派に譲歩したようで、会議では最終的に当初の主張を変えて「現政権支持」を打ち出した。

この危機のなかで、ネパール首相はコペンハーゲンに続いて中国訪問と、外遊が続く。Jana Asthaによると、月曜日に首相がコペンハーゲンに発つ日の朝、プラチャンダは首相に外遊をキャンセルして国内の問題解決に取り組むよう要請したというが、ネパール首相がそんな要請を聞くわけもない。ネパールは、何とも先行き不安な年末を迎えようとしている。

    
小倉 清子
関連書籍
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ネパール王制解体
- 国王と民衆の確執が生んだマオイスト


 著者:小倉清子 
 出版:日本放送出版協会 
 定価:1218円(税込)
 <2007年1月刊>

 13年にわたる現地取材により明かされるマオイストの真実の姿。政府軍の空爆下、マオイストの拠点であるタバン村に赴くなど、命がけの取材を敢行し、党首プラチャンダはじめ、幹部、コマンダーへの徹底した聞き取りを実行。
 また90年代の民主化運動から継続的にネパールを見続けてきた経験をもとに、王政崩壊の新局面を迎え、激動するネパールの現在を鮮烈に描く。

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