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復刻連載「北のサラムたち1」第3回 プロローグ―ふたつの瀋陽事件(3) 北朝鮮から来た奇妙な男からの誘い 石丸次郎

街角で私に声をかけて来た北朝鮮青年のキム・ガンホ。1993年7月中国瀋陽にて撮影石丸次郎(アジアプレス)

 

◆奇妙な男からの誘い
「南朝鮮から来た方ですか?」

1993年7月、初めての朝中国境取材に赴いた直後のことだった。中国遼寧省瀋陽市の外国領事館街の路頭で、私は背後から突然声をかけられた。朝鮮語だった。

その呼びかけにギクリとして振り返ると、グレーのズボンにくたびれたワイシャツ姿の男が立っていた。ネクタイはしていない。男は視線がやけに落ち着きがなく、少し頬がこけ、明らかに何か周囲を気にしており、少し怯えているようにも見えた。

このとき私が瀋陽にいたのは、まさに北朝鮮関連取材をスタートするためだった。瀋陽には北朝鮮の領事館があり、これから北朝鮮との国境に向かって南下していくに当たり、もしかしたら観光ビザをもらって北朝鮮に入国できないものかと、瀋陽の北朝鮮領事館を訪ねることにしていたのだ。だが、「日本人は無理」だとあえなく断られ、ホテルに戻る途中でその男に声をかけられたのだった。

私は、自分が南朝鮮人=韓国人ではなく、日本人の記者だということ、朝鮮語はソウルに留学して学んだこと、北朝鮮と中国の国境地帯の取材のために、中国には初めて来たこと、などを説明した。

「少しお話しできませんか?」

男は私を誘った。自分は北朝鮮から来たと言った。
怪訝なものを感じながらも好奇心を覚えた私は彼の誘いに応じることにし、サイダーを買って路上に座り込んで話し始めた。

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