アジアプレス・ネットワーク

核心の現場から伝える 報道ウェブジャーナル

アジアプレス設立30年記念イベント

復刻連載「北のサラムたち1」第12回 ああ哀しき者よ、汝の名は「北朝鮮の女」(3)  スニが子供を残して脱北した理由

中国朝鮮族のスンホと平壌から越境してきたスニ。2001年1月延辺朝鮮族自治州で石丸次郎撮影

復刻連載「北のサラムたち1」第1回へ

北朝鮮に残した五歳の子供

年を追うごとに、延辺地区の北朝鮮難民取り締まりは厳しさを増していった。スンホの住むこの村は大丈夫なのだろうか?聞けば、200戸ほどのこの村に北朝鮮「花嫁」は十数人おり、その半分の家には子どもがいるという。

「村の人口が少なくなっているんで、村長はじめ村の幹部は、北朝鮮『花嫁』を積極的に守ろうとしてくれています。公安の捜索があるときは、事前に知らせて避難させるんです。でも、今いちばん心配なのは、スニの子どものことなんです」

スンホはそう言って、傍らに座るスニのほうを見やった。スニの表情にみるみる影が差していった。そして、うつむいたまま、スニはポツリと言った。

「……北朝鮮に五歳になる子どもを置いてきてしまったんです」

「子どもはどうするつもりなの?」

私はスニに訊かないわけにはいかなかった。

「会いたいですよ。でも、今の気持ちを正直に言えば、子どもに会うためだけに北朝鮮には戻りたくはないんです。前夫の両親がいるから、しばらくは大丈夫でしょう。私が中国で落ち着いて、お金もできたらあの子を中国に連れてきて、この人(スンホ)と一緒に暮らしたいです。北朝鮮にはもう住めません。一度中国に来た人で、北朝鮮に帰りたいという人間は一人もいないはずです。それでも帰る人は、家族が待っているとか、仕方ない理由があって帰るんでしょう。北朝鮮の社会は……あまりにしんどいんです。女には、あまりにしんどいところなんです」

この記事は会員記事です。 すべての写真、記事、動画をご覧になるには、有料会員登録が必要です。 以下の、新規会員登録リンクより、新規会員登録ができます。 会員の方は、ログインしてください。

既存ユーザのログイン
   
金正恩時代の中学校教科書資料集 DVD
Return Top