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リムジンガン1号~7号

復刻連載「北のサラムたち1」第54回“反体制派難民”との共同生活(6) 文芸春秋に原稿が載る

市場をさまよっていた女児のコチェビ。全国どこでも見られた光景だ。大飢饉の最中の1998年10月に元山市にて撮影アン・チョル(アジアプレス)

「自分のメッセージが故郷の人々に届いたら……」

北朝鮮内部の凄まじい飢餓と人権蹂躪の実態を赤裸々に綴ったドンミョンの原稿は、幸い1998年春に日本と韓国のいくつものメディアで発表することができた。ドンミョンの原稿は北朝鮮に残った家族の安全に係わる問題以外は、北にも南にも何もはばかることなく書かれており、信用度も資料的価値も非常に高いと評価された。

「いやぁ、これが俺の原稿か……」

日本から持ち帰った掲載誌(「文藝春秋」1998年4月号)をドンミョンは何度も開き、日本語は一文句も解さないくせに「文 朴東明」と銘打たれた自分のページを飽きもせず繰り返しめくっていた。十数万円の原稿料を手渡すと、しばし、中国元と北朝鮮ウォンでいくらになるかを計算した後、飛び上がって驚いた。中国では、当時のざっと一般家庭の一年分の生活費、北朝鮮では数年間暮らせる金額だったからだ。

文才のあるドンミョンが、原稿料で自活していくような方法が取れないものかと考えていた私は、子どものように無邪気に顔を綻(ほころ)ばせるルームメートを見て本当に嬉しかった。その晩は、どうしても1杯おごりたいというドンミョンに連れられ、延辺名物の狗鍋で遅くまで痛飲した。

突然対北放送で紹介される
数日後、いつものとおり外で取材を済ませて部屋に遅く戻ると、ドンミョンはすでに布団に身体を横たえ、短波ラジオを聴いていた。海外の朝鮮語放送がよく聴こえる午後2時頃から布団の中でラジオを聴くのがドンミョンの日課になっていた。私が横の布団に潜り込むなり、ドンミョンが声をあげた。

「ヒョンニム! 俺のことをラジオが紹介しているよ!」
雑音混じりの朝鮮語放送に耳を傾けると、
「中国に脱出したバク・ドンミョン同志が、このたび日本の『文藝春秋』という雑誌に、過酷な飢餓体験を寄稿した。バク・ドンミョン同志は、北朝鮮では闇市場に「コチェビ」と呼ばれる浮浪児が集まっていることなど、悲惨な朝鮮の実態を世界に暴露したのだ」 「北のサラムたち1」は電子書籍で全ページがお読みいただけます。詳細>>>

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