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リムジンガン1号~7号

復刻連載「北のサラムたち1」第58回“反体制派難民”との共同生活(10) 北朝鮮での秘密撮影

アン「そっちにいるのは妹かい?」  子ども「はい、そうです」

 

アン・チョルは、二カ月足らずの北朝鮮秘密撮影を、北朝鮮風に言うと「勝利的に成功をおさめて」中国に帰還した。撮影したのは北朝鮮中部の三都市だった。1998年10月末、「作戦成功無事帰還」の報せを聞いて、大阪にいた私はすぐに中国に飛んだ。

チョルが持ち帰ったビデオテープは2本、撮影時間は合わせて90分であった。映像を観て、北朝鮮民衆の無残な姿に私は胸が疼いた。映像に記録された北朝鮮の哀れな子どもたちの現実の姿は、越境者、難民たちの証言そのままだった。

そして驚かずにはいられなかった。チョルがなんと見事なカメラワークで対象に迫っていることか! ターゲットを定めると臆することなく近づいて行く勇気は素晴らしかった。特筆すべきなのは、チョルは撮影だけでも困難なのに、拾い食いしている「コチェビ」と呼ばれる浮浪児たちに話しかけ、肉声を記録していたことだった。
関連写真:権力に対抗する庶民の姿撮った(10枚)

アン「ありゃ、靴もないのか。親はどうしたの?」

 

スクープ映像に世界が驚いた

チョルが撮影した「北朝鮮潜入ビデオ」は、予想どおり、世界で大きな反響を巻き起こした。

1998年12月に東京の外国人記者クラブで行われた映像公表記者会見には、日本のテレビ各局、新聞各紙はもちろん、東京に支局を置く韓国メディア全局全紙、そのほか内外合わせて40ものメディアが参加した。

韓国では、テレビ各局が定時にトップニュースで報じたほか、独、英、仏、香港、米をはじめとする欧米メディアも、こぞって「北朝鮮内部の真実暴露」のニュースを詳しく取り上げた。

チョルの撮った映像は、こうして瞬く間に世界に拡散し、北朝鮮の飢えの実情と、瀕死の状態で彷徨うコチェビたちの存在を示す、初めての「動かぬ証拠」を国際社会に突きつけた。「アン・チョル映像」は文字どおりの「大スクープ」となったのである。
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