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リムジンガン1号~7号

ジョン・レノン「ハッピークリスマス」を聴くのが苦痛だ (加藤直樹)

ジョン・レノンの71年作品「ハッピークリスマス(戦争は終わった)」はベトナム戦争反対の曲だった。写真は2004年、イラクに派兵された米軍兵士。(2004年5月バグダッド・撮影・玉本英子)

■戦争は終わる、あなたが本当に望むなら

私はクリスマスが苦手である。理由はいろいろあるが、その一つが、至るところで「ハッピークリスマス」を聴くはめになることだ。正確な曲名は「ハッピークリスマス(戦争は終わった)」。ビートルズ解散翌年の1971年に、ジョン・レノンが発表した曲である。曲名は知らなくても、誰もが必ず聴いたことがあるはずだ。

この曲では「war is over,if you want it」というコーラスが繰り返される。それは、ジョン・レノンとオノ・ヨーコが1969年12月にニューヨークのタイムズスクエアに出した巨大な看板の文言から来ている。

1969年、アメリカのベトナムへの軍事介入は泥沼化していた。徴兵制の下、数十万人の若者たちが送り込まれ、正義のない絶望的な戦いを続けていた。アメリカはナパーム弾を投下するだけでなく、ゲリラが潜む密林そのものを消し去るために枯葉剤を上空からまき散らした。その毒は、後にベトナムの多くの子どもたちに遺伝的障害を与え、枯葉剤が降り注ぐ中を進軍したアメリカの兵士たちにも後遺症を残すことになる。

赤紙におびえる若者たちはもちろん、リビングのテレビを通じて悲惨な戦いの様相を見つめる大人たちもまた、言葉の上ではともかく、内心では戦争にうんざりしていた。この年の9月には、カリー中尉が率いる1個小隊が無抵抗の村人504人を虐殺した「ソンミ村虐殺事件」が明るみに出て、アメリカ社会に衝撃を与えた。

ジョンとヨーコがタイムズスクエアに巨大な看板を出したのは、その3か月後のことだ。白地に大書きされたその文字に、道行く人々の目は吸い寄せられたことだろう。「WAR IS OVER!」。

戦争が終わっただって? ベトナム戦争がやっと終わったのか? だがその次の瞬間、彼らはその下に小さく書いてある言葉に気づく。「…IF YOU WANT IT」。戦争は終わる、あなたが本当に望むなら、というわけだ。

前衛芸術家のオノ・ヨーコらしい“作品”だと思う。「WAR IS OVER!」の文字を見た瞬間、人々の胸は高鳴っただろう。自国が行う戦争を支持する人さえも、その瞬間、早く戦争が終わってほしいと思っている自分に気づかされたはずだ。そして「IF YOU WANT IT」、あなたが望めば、という文言は、戦争を支え、続けさせている自分たちの責任を想起させるのに十分だった。
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