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リムジンガン1号~7号

<パレスチナ現地報告>電力危機にあえぐガザ住民(1) 麻痺する日常生活 土井敏邦

人工呼吸器につながれた1歳の子。電気が止まれば命を絶たれる。2017年7月、ガザ市で撮影土井敏邦

 

この2ヵ月間、ガザ地区の電力事情が悪化の一途をたどっている。イスラエルがこれまでの電力供給を大幅にカットした上、ガザ地区内の発電所も、燃料補給の激減により、一時ガザ全体に必要な電力の十数%しか供給できない状況に陥ったからだ。電力の危機的状況は水の供給にも影響し、市民の日常生活をあらゆる場面で圧迫している。危機にあえぐガザ住民の暮らしぶりと苦悩をリポートする。(ジャーナリスト・土井敏邦)

◆病院への影響

ガザ市のある小児病院の集中治療室(ICU)に入ると、赤ん坊のように小さい1歳半の男の子がベッドに横たわり、いくつものチュウブにつながれていた。のど元につながれた人工呼吸器の太いチュウブは、自力で呼吸ができないこの子にとって“命綱”だ。もし電気が止まったら、人工呼吸器は止まり、この子の命も途絶える。

「この子は脳の機能がマヒし、この人工吸引器で生存しています」と担当の医者が説明した。「この人工吸引器は電気がなければ動きません。その電気が止まれば、手動でこの子の呼吸を支えなければなりません」。

実際、突然の停電時に発電機への切り替えに手間取って人工呼吸器が機能せず、一時、この子は危篤状態に陥った。医者と看護師たちがICU室に駆け付け、酸素吸入などの緊急処置でやっとこの子の命はつながった。
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「生き延びられるだろうか?」と私は世話をする若い女性の看護師に聞いた。

「そのために私たちは全力で看護しているんですよ。この子だって人間なんです」

「ガザ地区の封鎖が強化された2007年以来、現在の状況はこの10年間で最も深刻な事態です」と病院長のモハマド・セルミアは言う。

「電気は集中治療室や人工透析室、内視鏡検査室などにとって不可欠です。電気なしではやっていけないんです。現在、一日のうち20時間ほどは自前の発電機に頼っています」

インタビューの最中もずっと近く発電機の音が鳴り響いていた。現在、燃料のディーゼルはWHOなどから補給されているが、イスラエルの封鎖によって燃料のディーゼル油の供給が途絶えたり発電機が故障したら、さまざまな医療器具は使えなくなり何人もの患者たちが命を失うことになる。
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