![]() 【「ここはすばらしい地区だった…」と話すハッサン・ハミッドさん】 |
米軍のファルージャ作戦への怒りで、スンニ派・シーア派が団結したのもつかの間、その後、イラク人は、自分たちの宗派、党派、地元部族の政治力を高めることに奔走し、相手党派を攻撃する。昨日まで犯罪者や街のゴロツキだった者がいま、警官の制服を着る。そしていま、シーア派政党が警察を支配し、スンニ派の誘拐、暗殺に手を染める。
一方、スンニ派武装勢力は、シーア派を狙って武装襲撃を繰り返す。
「わざとやらせて双方の殲滅戦を狙ってるんじゃないか」と言うイラク人は少なくなくない。
日本でも、新左翼セクトの内ゲバを、警察がしばらく”静観”していたのと似たような構図だ。内ゲバと違うのは、相手組織だけを狙ったものではなく、相手宗派地区のモスクや市場をも狙って自爆や迫撃弾攻撃を加え、多数の市民が巻き込まれていることだ。
いま、ファルージャやラマディがあるアンバル州のスンニ派多数地域では、スンニ派部族長の責任の下、米軍が武器を提供していると、イラク軍司令官は教えてくれた。
ザルカウィ系列のアル・カイダ機構など、過激な外国人義勇兵部隊に対し、イラク人の反米組織を「アンバル革命軍」として武装させることで反目させ、切り離し工作をはかる計画がはじまっている。今後、アルカイダ系組織とイラク人系スンニ派組織が衝突することもあるだろう。
![]() 【アーメル地区の中心を走る「4月7日通り」。右手がシーア派、左手がスンニ派エリアになって武装勢力が拠点を作り、互いに殲滅戦を繰り広げる。道路の中央にひるがえるイラク国旗がむなしい】 |
パトロールで出かけた先で、シーア、スンニ双方の地区を訪れ、住民と話をした。
「ここは昔はほんとうに平和ですばらしい地区だったんだよ」
「結婚式には近所どうしで招待しあった」
どちらの住民もありし日の思い出を話してくれる。
「マンタカ・シャバハ」とだれもが言う。幽霊地区という意味だ。ゴミは放置され、下水はあふれ、人もまばらだ。いま、ここはまさにゴーストタウンだ。
ハッサン・ハミッドさん(50歳)は、スンニ派地区で雑貨店を営んでいる。検問所の近くなので店を続けることが出来るが、地区の隣人たちは生活をあきらめ、次々と出て行っているという。
「過激な男たちは、最初は外から車でやってきて襲撃を繰り返した。いま、地区の中で拠点をつくって狙撃や迫撃弾で攻撃してくる。殺しあいの場所になった。だれもが狙われる。アメリカがイラクを、そしてイラク人を変えてしまった…。もし彼らがイラクを望むなら、いつでも出て行ってやるよ。私には家族がいるんだ。生きなければならないんだ…」
会話は、パーンという狙撃の音でさえぎられた。
嘆きと絶望がバグダッドを、そしてイラクを覆っている。
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イラク・トルコ・イラン・シリアにまたがるクルディスタン。分断民族クルド人とは。クルド問題とその他の地域も取材中(坂本卓/アジアプレス)





