■バグダッド従軍日誌(9) 銃と試練

兵士が銃の訓練を受けているかどうか。それを見るひとつのポイントが、持ち方だ。
ドラマや映画などでは、銃を持ち歩くときに、引き金に指をかけて持っているシーンがあるが、実際はそんなことはまずない。
訓練を受けた者は、兵士でも警官でも、引き金に指をかけるときは、撃つときだ。それ以外の時はかならず右人差し指をまっすぐ伸ばして銃に添える。
日本で、銀行強盗が散弾銃をもって押し入った際、防犯カメラの映像を分析する警察の捜査員は、犯人がどう銃を持っていたかもチェックしている。人指し指を伸ばして添えていれば、猟銃所持の経験などがわかるからだ。

かつて、イラクで新規に採用された警官や、イラク市民防衛隊(ICDC)に入隊した若い兵士たちは、カラシニコフを持ち歩くときは、いつも引き金に指を掛けているうえに、安全装置は開いたままだった。
ホテルや病院の門番、民兵もたいていカラシニコフ銃を持っているのだが、みんな安全装置なんかかけない。弾を装填しなければ大丈夫なのだが、それでも暴発事故はけっこうあった。
「シッダ・アル・アムナ」(安全装置をかけてくれ)。イラクで覚えた実践アラビア語のひとつだ。
サッカーでイラクチームが勝ったときや、結婚式にも、花火のごとく銃をパーン、パーンとやるのがあたりまえになっている土地柄。
「上に向けて撃った弾は、いつかは落ちてくるだろ。あぶないじゃないか」
そう言うと、かえってくる答えはたいてい同じだ。
「それはそのとき。それも神さまの決めた運命というものだ」
いまのバグダッドは、どこから弾が飛んでくるかわからない。そして、自爆や誘拐に巻き込まれる恐怖の中で暮らすしかない。
神さまが決めた運命は、これほど過酷なのか。イラクと、そしてイラク人が直面する試練は、はかりしれない。(2007/04/28)
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クルディスタン日誌というより、しばらくは「バグダッド日誌」ですが、そのまま続けます。
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イラク・トルコ・イラン・シリアにまたがるクルディスタン。分断民族クルド人とは。クルド問題とその他の地域も取材中(坂本卓/アジアプレス)



