◆イランの麻薬事情

イランは麻薬の生産国アフガニスタンに隣接し、ヨーロッパや中東への麻薬移送ルートの途上にあることから、麻薬の密輸と常習者の増加に長年苦しめられてきた。麻薬対策本部の発表では、イランの年間麻薬密輸収入は30億ドル(2013年)、その前年の薬物押収量は500トンに及び、この30年間で30万人近い密輸業者と売人が逮捕されている。国内の常習者は200万人とも300万人とも言われ、現在は刑務所内への薬物の持ち込みと蔓延が大きな問題となっており、最新機器の導入で対処するとのニュースがこの11月にも報じられたばかりだ。

このため、麻薬犯罪に対しては厳罰主義を取り、これまでの麻薬取締法では、アヘンなら5キロ以上、マリファナ、コカイン、ヘロインなどは30グラム以上の所持で死刑が確定した。

その結果、イランの年間処刑者数はここ数年、中国に次いで世界第2位であり、アムネスティーインターナショナルの報告では、2015年度のイランの死刑執行数は977件以上とされている。人口密度で換算すれば、中国を抜き世界1位の「死刑大国」となり、毎年のように国連人権委員会から非難決議を採択されてきた。

イラン国内でも、死刑執行数と薬物犯罪の逮捕者が比例して増加していることから、麻薬取締本部をはじめ警察、司法関係者の間からも、「麻薬犯罪では死刑は抑止力になっていない」「まず麻薬問題の根源である失業や経済的・文化的貧困をなくさなければならない」とする、現行法への疑問の声があがっていた。(次の回へ

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