寝床を提供しているイナクさんが、シラミがいるからと頭を刈った。左から17、15、13歳。三人とも親が亡くなっているか行方不明状態。背後の山は北朝鮮。1998年4月に中国延辺朝鮮族自治州で撮影石丸次郎

復刻連載「北のサラムたち1」第1回へ

「韓国が豊かなことぐらい、みんな知ってますよ」

1998年4月、三週間余りの食糧支援のモニタリング活動を終え、北朝鮮から中国に出国して数日後、私はそこでも「しかめ面」の子どもたちに出会うことになった。北朝鮮から国境の川を命がけで渡ってきたばかりの13、15、17歳の少年三人組だった。

北朝鮮滞在を終え中国に出た私は、闇市場で受けた衝撃を引きずりながら、国境の川・豆満江(べり)で農業を営むキム・イナクさんの家に向かった。イナクさんは長年の取材協力者である。

家を空けていたイナクさんを探しに畑に出向くと、丸坊主頭の三人の子どもがで地面を耕しているのが遠くに見えた。畑に下りて三人を見ると、闇市場で眉間に皺を寄せていた子どもと同じしかめ面をしている。訊くとお腹が空くのに耐えられず、数日前の深夜に川を越えて中国に来て、見ず知らずのイナクさんの家に飛び込んだのだという。三人は畑仕事を手伝うことを条件にご飯を好きなだけ食べさせてもらえることになったのだ。

ビデオカメラをえて畑の中に突然現れた私に、三人は当惑を隠さなかった。なにせ、日本人もビデオカメラも生まれて初めて見るのだから仕方がない。ビデオを回しながら話を聞かせてもらうと、三人とも両親、あるいは片親がいなかった。数年来のの中で死んだり、食糧を探してくると家を出て行ったきり戻ってこないのだという。

――どうして中国に出てきたの?

13歳「お腹が空くし、家に誰もいないし……。中国では犬も白飯食べていると聞いたから。来てみたら本当だった」

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