福岡のある在日朝鮮人一家が北朝鮮に帰国して間もない60年代初めに撮影した記念写真。

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「朝鮮に帰国したことは、悔やんでも悔やみ切れません」

「新潟を出発した日のことですか?よう覚えてますよ。春の暖かい、よく晴れた日でね。は見送りの人で溢れてました。あっちでもこっちでも別れを惜しんで泣いたり抱き合ったり。ワシはそんな見送りの人波を見下ろしながら、船のタラップを一人で上って行って甲板に出ました。

甲板も人でいっぱいでね、紙テープを見送りの人に向かって投げ下ろしている様子は、まるで滝のようやった。埠頭で見送る人たちは皆、船を見上げていて、ワンワン泣いている人もようけおりましたわ。船の上でも涙を拭い、手を振って、『ねえちゃーん』とか、『○―』と呼び合って……。

それから、ゆっくり船が岸壁を離れていくでしょ。ブオーという汽笛の音。あれは悲しい音やねえ。銅鑼(どら)の音?それはなかったと思うなあ。

ワシを見送りに来た人は誰もおらんかったけれど、涙が止まりませんでした。新潟の港が少しずつ遠ざかっていって、ああ、これで日本ともしばらくおさらばかと思うと、やっぱり悲しかったね。他の人もほとんど から離れないで、ずっと、ずっと、だんだんに小さくなる『日本』の姿を見つめていました」

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