妻は必死に商売して稼いでそれを準備するわけですよ。家族を食べさせながら。男は無断欠勤すると批判され、『労働鍛錬隊』に送られます。コロナ以降、統制が本当に厳しくなって容赦ありません。それでも、男はツケで酒を飲んだりするし、家事もやらない子育ても手伝わないというのが多い。一緒にいるのが嫌になるわけです」

※北朝鮮では職場で学習や動員に参加する「組織生活」が義務付けられている。「労働鍛錬隊」は、秩序違反などを理由に収容される短期の強制労働キャンプ。

 

――男性も辛い立場ですね。

「稼ぎがないから家では妻に責められるし、職場では、上に命じられるまま下僕のように勤めなければなりません。ストレスで酒を飲んで妻を殴る男も多いんです。私の住んでいるアパートでも、夫婦喧嘩の声がよく聞こえてきます」

――北朝鮮では離婚は簡単ではないと聞きます。

「政府はなかなか離婚を認めてくれないし、最近は離婚しようという人が多くて1年くらいかかります。それも、賄賂を出さないと早く進めてくれない。裁判所の役人たちは、離婚を求める女性たちから受け取る賄賂で暮らしているようなもんです。家出して実家に戻っても、居住登録がなくて取り締まりの対象になるので長くいられず、また戻るしかありません。離婚が認められるまで、女性には長く辛い時間が続きます」

――男性は離婚を受け入れますか?

「いいえ、大半は承認しませんね。妻と別れると途端に暮らせなくなるから。離婚に応じる条件として子どもを渡さず、養育を口実にしてお金を要求する事例が多いです」

(続く)

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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