経営委員会の古森委員長は辞任すべき

NHK会長の公募制、推薦制の実地を求める記者会見(12月10日、衆議院第一議員会館にて)」

「みなさまのNHK」会長がまた密室で選ばれようとしている。
1月に任期の切れる橋本元一NHK会長の後任を選ぶのは、経営委員会である。これは放送法によって定められている。ただ、「みなさまのNHK」の会長を選ぶプロセスに、NHKの主権者たる視聴者、市民がまったく参加できないのはおかしい。

今回は殊に経営委員会の古森重隆委員長が独断で強引な人選を進めている。言語道断である。古森氏(富士フィルムホールディングス社長)は、安倍晋三前首相と近い人物で、政治から独立、自立していなければならぬ、公共放送NHKの経営委員会委員長としてふさわしいとは思えない。

古森氏は次期会長として、アサヒビールの福地茂雄相談役を推すつもりらしいが、なぜ福地氏なのか、まったく議論もされないまま、委員長の独断で決定されようとしている。これほどNHKの主権者たる視聴者、市民をバカにした話はない。

「NHKの抜本改革」とは、報道機関としての政治からの「自主」「自立」「独立」を守る態勢を築くことであり、経営面からのみの「構造改革」は放送文化を圧殺することになる。このままではNHKはわれわれの望む公共放送のあり方から、もっとも遠い「代物」になってしまう。NHKは政治の付属物となり、放送の文化は一層やせさらばえることになる。
次期会長を選ぶ経営委員会は12月25日に開かれるという。公共放送の会長を密室で選ぶことがあってはならない。
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※ 私は松田浩(元立命館大学教授)、桂敬一(元立正大学教授)さんらとともに、経営委員会に対して会長の公募制、推薦制の実施を求める申し入れ書を提出し、記者会見を行った。12月10日のことである。この申し入れ書には、川口幹夫元NHK会長をはじめ、NHK・OB、メディア研究者、ジャーナリスト、弁護士など80名を越える人々の推薦をいただいた。以下、申し入れ書と推薦人名簿です。

1.NHK経営委員会 委員各位              2007年12月10日
NHK会長候補者の推薦に関する申し入れ
経営委員各位におかれましては、よりよい公共放送実現のために、日夜ご精励のことと敬意を表します。
私たちは、来年1月末に任期満了を迎える現会長・橋本元一氏の後任会長選任にあたって、貴経営委員会が適格者を広く視聴者・市民に開かれた論議を通じて求められることを願う主旨から、原寿雄さん(ジャーナリスト、元共同通信編集主幹・専務理事)と永井多恵子さん(現・NHK副会長)のお二人を、ここに会長候補者として推薦申し上げます。
公共放送NHKが言論・報道機能をもつ基幹的な放送メディアとして民主主義社会に果たす役割を考えるとき、私たちはそのNHKを代表する会長の選出手続きに、重大な関心を持たざるを得ません。その場合、求められるのは、選出過程における公開性と視聴者参加性であり、選出基準の明確化です。私たちは、NHK会長の選出基準を、第一義的に放送のジャーナリズムと文化的役割について高い見識を持ち、言論・報道機関の長として、自主・自立の姿勢を貫ける人物かどうかに置くべきだと考えます。
今回推薦した原寿雄さんは、日本における言論・報道界のご意見番的存在で、卓越した見識と知性を兼ね備えたジャーナリスト・文化人です。また永井多恵子さんは「新生NHKはBBCを手本に」を確たる信条に掲げて副会長の重責を果たし、国会などでの答弁・対応も、その見識と自主・自立の姿勢において際立っています。ともに万人が認める会長最適任者と、私たちは確信します。
公共放送の会長選出については、イギリスや韓国などで公募制、推薦制が実施され、国民的論議が交されるなかで民意を代表する優れた人材を選ぶ仕組みが工夫・採用されています。日本でも、現行放送法の枠内で、経営委員会の裁量により公募・推薦制を採用することは十分可能です。従来、会長の選出作業は密室のなかで行われ、そのため政府首脳の意向に少なからず左右されてきました。こうした宿弊を断ち切り、透明な仕組みのなかで、広く視聴者・市民の参加と総意をもとに次期会長を選出することは、NHKと視聴者の絆(きずな)を強め、失われかけた信頼を回復するうえでも重要と考えます。私たちは、今回の推薦活動がきっかけとなって、他薦・自薦の輪が大きく広がり、国民的論議のなかで次期会長が選ばれることを願っております。
貴経営委員会が、私どもの推薦した候補者を含めて、開かれた透明なプロセスのなかで広い視野から公共放送の責任者に真にふさわしい人材を選ばれることを心から期待します。
原寿雄さんの略歴:
1925年、神奈川県平塚生まれ。ジャーナリスト。
東大法学部卒。50年、社団法人共同通信社入社。社会部記者、バンコク支局長、外信部長、編集局長、編集主幹を歴任。常務理事、専務理事として編集、電波、ニューメディアを担当したのち、株式会社共同通信社社長。この間、民放連放送番組調査委員会委員長、NHKと民放による第三者機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の「放送と青少年に関する委員会」委員長などを務める。
主な著書は『ジャーナリズムの思想』(岩波新書)、『新しいジャーナリストたちへ』(晩聲社)、『それでも君はジャーナリストになるか』(晩聲社)、『新聞記者』(東洋経済新報社)、『市民社会とメディア』(編著、リベルタ出版)など多数。
永井多恵子さんの略歴:
1938年、東京都生まれ。現・NHK副会長。
早稲田大学卒。60年、アナウンサーとしてNHK入局。解説委員、解説主幹を歴任。1990年、女性初の浦和放送局長をつとめる。95年、NHK退職後、世田谷文化生活情報センター館長に。2005年、橋本新執行体制のもとで副会長(女性では初めて)に就任。毎月第1日曜日に「永井多恵子のあなたとNHK」を担当し、視聴者とNHKを結ぶ活動に貢献。
主な著書は、「文化ジャーナリズム試論」(石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞記念講義録2、早稲田大学出版部、所収)、『21世紀の家族像』日本放送出版協会/共著)、「『アーツプラン21』と芸術文化支援」『文化庁月報』1996年11月など多数。
以上
原さん、永井さんをNHK会長候補に推薦する会
世話人 松田 浩
桂 敬一
野中章弘
2.推薦賛同者(個人)  2007年12月9日現在:順不同
川口幹夫(元NHK会長)
川平朝清(昭和女子大監事、元NHK経営主幹)
藤井 潔(株)クリエイティブネクサス会長、
NHK・OB)
川竹和夫(ICFP-JAPAN代表、元東京女子大学教授・NHK放送世論調査所長)
小中陽太郎(作家、NHK・OB)
小出五郎(日本科学技術ジャーナリスト会議会長、
元NHK解説委員)
石川 明(元関西学院大学教授、NHK・OB)
酒井広(元NHKアナウンサー)
高野春広(東海学園大学教授・元NHKアナウンサー)
津田正夫(立命館大学教授、元NHK報道プロデューサーj
木原克之(NHK・OB、番組制作)
高橋 亨(NHK・OB、アナウンサー)
吉田茂彦(NHK・OB、アナウンサー)
沖野皓一(NHK・OB、アナウンサー、元東海学園大学教授)
志賀信夫(放送批評懇談会理事長)
壱岐一郎(元沖縄大学教授、元民放ニュースキャスター)
野崎 茂(メディア学舎総主事、元東京女子大学教授)
服部孝章(立教大学教授)
柳沢伸司(立命館大学教授)
須藤春夫(メディア総合研究所所長、法政大学教授)
丸山重威(関東学院大学教授)
岩崎貞明(『放送レポート』編集長)
藤田博司(メディア研究者、元共同通信記者)
大石泰彦(青山学院大学教授)
大谷昭宏(ジャーナリスト、元読売新聞記者)
田崎篤郎(東京大学名誉教授。元東大社会情報
研究所所長)
石村善治(福岡大学名誉教授、言論法研究者)
亀井淳(日本ジャーナリスト会議代表委員)
奥平康弘(憲法研究者)
樋口陽一(憲法研究者)
田島泰彦(上智大学教授)
暉峻淑子(埼玉大学名誉教授)
井出孫六(作家)
山田太一(作家・脚本家)
吉永春子(ジャーナリスト、元TBS)
高畑 勲(アニメーション映画監督)
大澤 豊(映画監督)
吉見俊哉(東京大学教授)
山本宗補(フォトジャーナリスト)
大西五郎(元愛知大学教授、元放送記者)
北村 肇(『週刊金曜日』編集長)
野村進(ノンフィクションライター)
柴田鉄治(日本ジャーナリスト会議代表委員、
元朝日新聞論説委員)
石丸次郎(ジャーナリスト)
中村陽一(立教大学教授)
元木昌彦(元講談社/オーマイニュース編集長)
隅井孝雄(日本ジャーナリスト会議代表委員、
元京都学園大学教授、日本テレビOB)
中山市太郎(桜美林大学准教授)
高橋恭子(早稲田大学川口芸術学校教授)
熊谷博子(映像ジャーナリスト)
林香里(東京大学大学院情報学環准教授)
飯室勝彦(中京大学教授)
竹見智恵子(フリージャーナリスト)
加藤剛(日本ジャーナリスト会議会員)
守屋龍一(日本ジャーナリスト会議事務局長)
桃井和馬(報道写真家)
五十嵐勉(作家・「文芸思潮」編集長)
白石草(NPO法人OurPlanet-TV代表理事)
日隅一雄(弁護士)
田中早苗(弁護士)
杉浦ひとみ(弁護士)
古居みずえ(ドキュメンタリー映画監督)
坂本 衛(ジャーナリスト)
岩本 太郎(ジャーナリスト)
松田 浩(メディア研究者、元立命館大学教授)桂 敬一(放送の公共性の<いま>を考える
全国連絡協議会世話人、元立正大学教授)
野中章弘(ジャーナリスト、放送の公共性の
<いま>を考える全国連絡協議会世話人)

推薦賛同者(団体) 2007年12月9日現在:順不同
NHK問題を考える大阪の市民の会
NHK問題を考える会(兵庫)
NHK問題京都連絡会
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(以下、2007年12月10日以降12月13日までに到着分)
推薦賛同者(個人)
池辺晋一郎さん(作曲家)
小山内美江子(脚本家)
降旗康男(映画監督)
湯川れい子(音楽評論・作詞家)
吉原功(明治学院大学教授)
吉田俊実(東京工科大学教員、メディアの危機を訴える市民ネットワーク事務局)
伊藤道雄(立教大学大学院教授)
海南友子(ドキュメンタリー映画監督)
緒方修(沖縄大学教授)
岡村隆(月刊『望星』編集長)
魚住昭(ジャーナリスト)
伊藤洋子(東海大学教授)
山口みつ子((財)市川房枝記念会常務理事
推薦賛同者(団体)
日本ジャーナリスト会議
日本消費者連盟

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