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【たたかう漁師「ひさぼう」】

「海上空港」2
私と学生二人、そして座り込みを続けている青年を乗せて沖合いに出てくれたのは、「ひさぼう」という地元の漁師だった。五人も乗ると、満載という感じの小さな船である。
まるで原付で煙草を買いに出るような身軽さで、船はダッシュをかける。
ずっとここで魚をとってきたんですか、と尋ねると恥ずかしそうに頷く。「ひさぼう」はそういう人である。

我々を船に乗せてくれるのだから、「反対派」ということになるのだろう。しかし「守る会」の人たちは、反対派と賛成派に地元民を分けることを拒否する。当たり前だろう、このような透き通った珊瑚の海をコンクリートで埋めてしまうことに賛成する漁民などいるはずがない。
しかし、実際に辺野古で海上滑走路建設に公然と反対している人は僅かしかいないのが、現実である。「ひさぼう」は「例外」なのだ。

海を埋め立てないでくれ、と声をあげることがはばかられる、そういう「事態」がこの海辺の小さな村の水面下で展開されてきた。僅かな滞在中にも、「反対」することで仕事を干された人の話を幾度も耳にした。周りには基地で働いている人も大勢いる。しかも辺野古の人々には、戦後が始まる同時に、基地と隣同士の生活が用意されていたのである。

普天間基地の移設、米軍滑走路の建設計画は、生コンが海に入る前からすでに、村の共同体を内部から腐食させてしまっている。もしかしたら、そのことのほうがずっと悲しいことなのかもしれない。
+辺野古からの通信によると、政府の環境調査は継続中。最近、作業機器の設置が強行されたという。

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