生きる方法は脱出のみ [その7]

頭にのせて、持って、抱えて、かついで… 重たい荷物を頭にのせる。みんなが、食べ物を手に入れるために各地をさまよう流浪民になってしまいました。 ―キルス

頭にのせて、持って、抱えて、かついで…
重たい荷物を頭にのせる。みんなが、食べ物を手に入れるために各地をさまよう流浪民になってしまいました。 ―キルス

 

そうなると、またジャンマダンに行って、一番安い古着を買わなければならない。だが、いくら安い物を買うといっても、そんな日がたびたびあったので、ことは深刻であった。

しかし服や靴を奪われて、またそれを買わなければならなくなるよりも、子どもがひどく殴られることの方が問題だった。先にも書いたが、その工場には、安全部の巡察隊、武装保衛隊、産業保衛隊、職場の警備組をはじめ、四重、五重の警備陣がいたが、そんな中で、どの警備陣にもつかまらないということは、めったなことではないのだ。

つかまってしまった時の「奉仕」(拷問)は凄まじい。げん骨で殴り、足で蹴とばし......。
罰を受けて子どもたちは体中に青あざを作った。子どもたちが殴られた痕を見てしまうと、親たちはもう工場には行かせようとはしない。
しかし、子どもたちは再び「攻撃戦線」に出かけるのである。工場を攻撃することでなんとか子どもたち自身も生きのび、家族も暮らしていけるからだった。

また、工場に行ってこそ、子どもたちは笑うこともでき、朗らかに歌をうたうこともできるからだった。
一度、長男が「攻撃」に出かけてひどい仕打ちを受けたことがあった。長男は、その工場の四階の作業場で安全部取り締まり隊員につかまりそうになって逃げようとした。つかまった時の苦痛を思い、作業階段から思いきって飛び降りた。
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