3歳のコチェビ 顔から両手、両足までパンパンにむくんではれ上がったコチェビの子ども。食べ物を探して地面をはい回るわずか3歳にしかならない幼い子…。この哀れな幼子はいつひもじさをしのぐことができるのでしょう。 ―キルス

3歳のコチェビ
顔から両手、両足までパンパンにむくんではれ上がったコチェビの子ども。食べ物を探して地面をはい回るわずか3歳にしかならない幼い子…。この哀れな幼子はいつひもじさをしのぐことができるのでしょう。 ―キルス

 

そんな中でもミング兄さんとぼくは、横になったまま口の中に入れていたドル札を用心深く抜き出した。ここに来る前に、安全のために、両替した百ドル札一枚を、ビニールに包んで口の中に入れてきたのだ。お金は少し濡れていたが、使えないほどではなかった。

4時間ほど眠って起きたところ、日が明るくなっていた。
その日、午後3時になってぼくたちにはじめての食事が出た。それはトウモロコシご飯(注・トウモロコシを砕いて炊いたもの)とキュウリのおかずだった。

ぼくたちはそのトウモロコシご飯を水もなしに一息に全部食べてしまった。二人分といっても、ひとりで食べても、全然足りないほどの量だった。それでも、それまで五回の食事を抜いていたぼくたちにとっては、とてもおいしいものであった。腹の足しになったのか、少し楽になった。一晩寝ていなかっただけなのに疲れて死にそうで、フラフラだったのが、トウモロコシご飯を少し食べおかげで、冷たい汗が流れた。

ぼくたちがつかまって3日目の朝、安全部に見たことのない安全員が4人入ってきた。その日、安全員4人とぼくたち二人はいっしょ駅に向かった。安全員四人のうち二人は銃をかついでおり、一人は近くの村の駐在所の所長であった。

もう一人は道安全局指導員であった。ぼくたち6名は、川の横の線路沿いに歩き、時には山道を歩いたりしながら隣の村の汽車駅に着いた。
しばらくすると汽車が駅の構内に入ってきた。すると商売人たちが、駅構内あちらこちらから現われ、「お買いなさいよー」と声をあげた。食べ物を家で作ってきて売る商売人たちであった。

汽車に乗っていた人があまりに多く、汽車の中に乗り込むことができなかった。
安全員は汽車の中間あたありまで行き、窓の方に向かって叫んだ。

「私たちは犯罪者護送員だ。乗っけてくれ」
安全員たちは、ぼくたちに先に乗れと下から支えて押し上げた。
(つづく)
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