南京虫と友だちに
(文) チャン・キルス

あー かゆい ゴキブリ、南京虫 「シラミがいるな」まわりが汚いので、家の中はいつもゴキブリと南京虫がうじゃうじゃいます。 ―ミング(キルスの従兄弟)

あー かゆい
ゴキブリ、南京虫
「シラミがいるな」まわりが汚いので、家の中はいつもゴキブリと南京虫がうじゃうじゃいます。 ―ミング(キルスの従兄弟)

 

そのあと、皆で中に入りご飯を食べた。
ご飯と言っても殻麦・大麦を砕いて、その粉に草を混ぜて作った粉飯であった。
砂がやたらと混ざっていて、飲み込もうとしてものどに引っかかり飲み込めなかった。ご飯はまっ黒で殻が見えて、草がたくさん混ざっていて、その上一握りの量にもならなかった。

ぼくたちは全員で九名であった。ぼくとミング兄さんと保母が一人、子どもたち6人だった。6人が食べる食事をすべてあわせても、一人前にもならなかった。しかし6人の幼いコチェビの子どもたちは、一生懸命食べていた。スープはまっ黒なワカメ汁だったが、ワカメはカビが生えて腐っているのか、スープはすっぱく苦かった。

何食も食べていないぼくたちは、食べたくなくても、まずくても食べないわけにはいかなかった。食事が終わった後、ぼくたちは経理員のおばさんについてある倉庫に行った。

その倉庫の中は腐った臭いが充満していた。彼女は中から服を取り出した。そしてぼくたちに着ている服を脱げと命令した。ぼくたちはわけがわからずにじっとしていると、彼女は声をあげた。

「お前たちはなんだ、救護所の秩序も知らないのか?」
ぼくたちは仕方なく、服を脱いだ。

彼女はぼくたちを短い半そでとパンツだけにし、そして膝までの古く縫い合わされたズボンを渡したが、それはあまりにもボロだった。ゴムもなかったのでズボンはすぐにずり下がってくる。

その倉庫を出て部屋に行った。救護所には50を越える部屋があるが、その中で灯りがある部屋はたったの二つであった。指導員の部屋と、経理員と保母がいる厨房室にだけ灯りがあった。

ぼくたちが入った部屋は、部屋とは言えないほどで、中国で見た豚小屋よりもひどかった。灯りがないことくらいは何でもなかったが、部屋中、南京虫だらけだったのである。

小さい子どもたち六人は、皆ぼくたちの部屋に入って来た。その子たちはトウモロコシの穂を一つずつくれた。経理員のおばさんがくれたと言うのだ。
トウモロコシは栄養が悪くて粒が固まっていない未成熟なものであった。またあまりに小さくて、ほんの一口で終わりであった。しかしお腹が空いていたので、それだけでもとてもおいしかった。
寝ようと床に横になった。

しばらくすると南京虫が噛みつきだした。どれほど強く噛まれたのか、痛いし、かゆさも口では言えないほどだった。とても寝ることはできなかった。南京虫は血を吸って、まっ赤に太っていた。米粒ほどの奴もいれば、小豆ほどのでかいのもいた。

南京虫を殺すとまっ赤な血が出てきた。血の臭いは、とてもムカムカし、吐き気がするほどだった。夜になると、南京虫たちが天井から雨が降るように床に落ちてきた。

南京虫は、昼間は救護所の壁を伝い天井の上にあがり、夜になるとぼくたちを苦しめた。
その日は一睡もできなかった。南京虫が多くて寝られなかったと言うと、だれもが嘘だと言うだろう。南京虫で苦しんでいたのはぼくたちだけではなかった。
救護所にあるすべての部屋がそうであった。
(つづく)
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