脱出だけが生きる方法
(文) チャン・キルス

お腹が空いて豆満江を越えたことが、何の罪なのでしょう 北朝鮮に残してきた家族を救い出そうと、中国から豆満江を越えようとして北朝鮮の国境警備兵につかまったぼくの姿。 ―キルス

お腹が空いて豆満江を越えたことが、何の罪なのでしょう
北朝鮮に残してきた家族を救い出そうと、中国から豆満江を越えようとして北朝鮮の国境警備兵につかまったぼくの姿。 ―キルス

 

体中がパンパンにふくれ上がり、血まみれになってぴくぴくと震え出すと、指導員はぼくに、「また逃げ出すのか。もう一度逃げ出したら足一本を折ってやるぞ」といった。

ぼくはとてもやるせなくなり、ぼくを産んだ両親を恨んだ。子どもを産んで責任も取れないのになんのために産んだのか、と。いっそこの世に生まれてこなかったら、血の涙で汚れたこんな「死の世界」を見ることもなく、こんな苦しみを味あわずにすんだのに......。

責任指導員は殴るのに疲れて、ぼくを救護所の横の水田に連れて行った。そして流れている水で顔を洗わせようとした。ぼくはフラフラとしながらも顔を洗おうとしたが、手があまりに痛く、足もひどくはれ上がっていて、腰を降ろすこともできなかった。腕と足を曲げられないと言った。
「こいつ、それしきのことで、仮病を使うのか。もっと殴られたいのか?」

彼はそう言って、無理に右腕を強く折り曲げさせ、靴をはいた足でぼくの頭を蹴とばした。ぼくは前に倒れ込んでしまった。
ずいぶんしてから、あぜを支えにしてなんとか起き上がった。流れる水はまたたく間に真っ赤に染まった。
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