中国と国境を接する咸鏡北道の会寧市。人口は10万を超える。金正日総書記の母、金正淑(キム・ジョンスク)の故郷としても知られている。中国との密貿易が盛んなことから、中国の携帯電話が多く流入し、内部情報の一大流出地になっている。2010年7月 撮影 李鎮洙 (C)アジアプレス

中国と国境を接する咸鏡北道の会寧市。人口は10万を超える。金正日総書記の母、金正淑(キム・ジョンスク)の故郷としても知られている。中国との密貿易が盛んなことから、中国の携帯電話が多く流入し、内部情報の一大流出地になっている。2010年7月 撮影 李鎮洙 (C)アジアプレス

 

◇中国の携帯電話の摘発時には「密告」の誘いも
9月28日に行われた朝鮮労働党代表者会や10月10日の党創建65周年を前後して、北部地域で情報統制が一段と厳しくなっていることが、アジアプレスの北朝鮮内部の通信員により明らかになった。

咸鏡北道に住むイム・チョミ通信員によると、9月以降、中国と国境を接している咸鏡北道の北部地域では、これまで取り締まりの対象になっていなかった小さな村にまで当局の人員が派遣され、中国の携帯電話の使用に対する厳しい取り締まりが行われているという。国境地帯での携帯電話の取り締まりは、通常、会寧(フェリョン)、茂山(ムサン)など、人口数万人規模の都市部を中心に行われてきた。

ある村では保衛部(情報機関)の要員数人が泊り込みで訪れ、「電波探知機」で携帯電話の使用を監視、また家々を回りながら携帯電話の所有もチェックし、電話が発見された場合にはその通話相手、内容について強く追及しているという。
摘発された人々は、携帯電話を没収され拘留される。その際に「自白書」への署名を求められる。自白書には「次回、携帯電話を使用し摘発された場合には、教化所(刑務所)での懲役や、山間部への追放刑を甘受する」という内容が含まれているという。

イム通信員によると、このような強い取り締まりの背景には「中国との国境地域で携帯電話を使用する者を逆賊と見なせ」という、平壌からの「方針」があるという。北朝鮮では通常、「方針」は、金正日総書記の意向によって発令される。
また、これまでの取り締まりとの違いとして
「保衛部要員が住民たちに対し『最近、咸鏡北道会寧市の消息通や、両江道恵山市からの連絡によれば、などという形で、韓国のメディアが北朝鮮内部の状況を報じている』と実例を挙げて追及している」
と伝えた。

実際に「RFA(自由アジア放送)」や韓国の北朝鮮専門インターネットメディアなどでは、信頼性確保のため、情報が流出する場所を明らかにする場合が多い。
さらにイム通信員は
「保衛部は『携帯電話で、誰がどのような相手に情報を流しているのかを自白あるいは密告すれば、減刑もありえる』と、摘発した人に持ちかけており、このため、中国との国境地域に住む人々は、互いの『秘密』を探ろうと、疑心暗鬼になっている」
と、緊迫した様子を語ってくれた。

金正日政権の世襲後継者として金正恩(キム・ジョンウン)氏が公然化された前後から取り締まりは格段に厳しくなっており、三代世襲に反対、もしくは無関心な北朝鮮住民の「本音」が国際社会に知られることを、北朝鮮当局が強く危惧しているものと思われる。(中国延吉=パク・ヨンミン)