「検閲」の腕章をした保安員(警官)。取締りを口実に賄賂をせびることが常態化しているという。(2010年5月平安南道 キム・ドンチョル撮影)

「検閲」の腕章をした保安員(警官)。取締りを口実に賄賂をせびることが常態化しているという。(2010年5月平安南道 キム・ドンチョル撮影)

 

「もう騙されない」が世論になった
パク:三代続けて世襲をしようとしている金正日について朝鮮の人々はどう考えていますか?
幹部:制度を変えようとせず権力世襲にこだわる理由を、人々はもうわかっていますよ。制度を変えるということは改革開放するということです。そうすると、(人民は)金正日の体制を激しく攻撃するようになるでしょう。

それは歴史が証明している通りです。九〇年代から、「今は『苦難の行軍』だが、もうすぐ良くなる」と繰り返して来ましたが、一向に暮らしは良くならない。最近は、「われわれの世代は今後もずっと苦労ばかりする覚悟を持たなければならない。だがその苦労の先に、後世が幸せになるだろう」と言っている。でも、いったい後世とはいつなんでしょう? (金正日は)「今日のために今日を生きず、明日のために今日を生きろ、今日苦労することをまず私自身が覚悟する」なんて嘘を並べています。

口では何とでも言えますからね。金正日の最後の嘘は「二〇一二年には強盛大国を建設する」というものになるでしょう。でも、「もう騙されない」と皆が考えています。強盛大国というのは、誰もがきちんと食べ、楽しく暮らし、羨むものが無い社会でしょう。でも、今まさに農民たちには食べるものが無いんです。

地面に落ちた穀物の皮を拾って食べている農民の姿を見ると......。中国で会った人々は、まるで跡継ぎの三男(金正恩)が北朝鮮に変革をもたらすことを期待しているように言います。ですが、あの根っこ(金一族)から新しい何かが出てくると思いますか? 私のような小人(しょうじん)には想像できません。

私が北朝鮮に戻る日も近づいていますが、正直に言うと、戻りたくありません。私が一人だったら、それこそ、どこかへ行ってしまいたい。もうすぐ私も六〇歳ですが、人生も残り少なくなってくる中、朝鮮で人生を無駄に過ごしたと思うと、腹が立って仕方ありません。

生まれてから苦労ばかりして......、まったく涙が出てきます。それでも、もう何年か我慢すれば変わるだろうと、そんな希望を持っているからこそ耐えられるのです。「その時」のために、準備をしながら変化を待とうと思っています。
(この項おわり)

注1 一〇年九月の労働党代表者会の前日、金正日総書記は、朝鮮人民軍最高司令官命令を出して金正恩を大将に任じたが、それ以前から大将の称号で呼ばれていた。
注2 国防委員会:九三年から金正日が委員長を務めており、〇九年の憲法改正で、委員長は国の最高指導者とされ、その権限が大幅に拡大された。
注3 一〇年九月の党代表者会で実際に、政治局委員は三人から一二人に、書記局の書記は五人から一一人に再編された。一方、韓国や日本のウォッチャーの予想に反して、四月九日の最高人民会議の人事で、国の最高国防指導機関と憲法で定められている国防委員会に、金正恩は名前を連ねなかった。
注4 保衛司令部:軍内の公安・政治問題を扱う情報機関。他の情報機関とは違い、金正日に直接、調査結果を報告するという。

◆ 〈リムジンガン〉民衆は「正恩大将」をどう見たか(3)
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