朝中国境の川・豆満江沿いでは、鉄条網の増設が続いている。写真は吉林省の龍井市三合鎮に張られた鉄条網。対岸は北朝鮮の会寧市。2012年7月30日 パク・ヨンミン撮影(アジアプレス)

朝中国境の川・豆満江沿いでは、鉄条網の増設が続いている。写真は吉林省の龍井市三合鎮に張られた鉄条網。対岸は北朝鮮の会寧市。2012年7月30日 パク・ヨンミン撮影(アジアプレス)

◆脱北と携帯電話による情報流出防止のため統制を強化

(李鎮洙)
北朝鮮は現在、4月15日の金日成生誕100周年記念式典や、金正恩氏後継体制確立のための政治行事、「ロケット」発射など、国家的重要イベントの渦中にあるが、中国との国境沿いの住民に対する統制がいつに無く強化されていることが、アジアプレスの北朝鮮内部の取材協力者からの連絡で明らかになった。
北朝鮮北部、咸鏡北道の朝中国境にある都市、茂山(ムサン)郡に住むこの取材協力者は12日朝、「国境地帯では毎日『宿泊検閲』が行われ、道路も封鎖して住民が通れないようにしている」などと、最近の様子を語った。

「宿泊検閲」とは、地区外の人間が無断で個人の家に宿泊していないかの検査を指す。主に人民班(住民組織)の責任者や保安署(警察)、そして保衛部(情報機関)によって行われる。特に国境沿いの都市や村は、中国へと脱北しようと人たちの中継地になっており、保安機関で特別に目を光らせている。許可証を持たない無断宿泊が発覚すると拘禁され取調べを受ける。その際に中国や韓国への脱出を企図していることが明らかになると、懲役刑などの重刑が課されることもある。

この取材協力者さらに、
「今は茂山郡内を移動すること自体が極度に制限されている。国境沿いの道路のあちこちに哨所(検問所)が設けられていて、住民は全く通過させてもらえない。本来、人民班で発行する『通行確認書』を持っていれば通れるはずなのに、引き返すように言われてしまう。また持ち物検査も行われている」と明らかにした。

この背景には、現地の住民が中国キャリアの携帯電話を使い、中国や韓国などと連絡を取ることを当局が極度に警戒している事情がある。当局の発する「妨害電波」のために、中国キャリアの携帯電話は非常に繋がりにくくなっているのだが、それを避けようと、住民たちは郊外に出たり、山に登ったりして電話を使おうとする。当局は、これを取り締まるために、道路そのものを封鎖したり、所持品の検査を行っているのだ。

北朝鮮では今後、13日には「最高人民会議(国会にあたる)」が、15日には「太陽節(故金日成主席の生誕100周年)」が控えている。これを前に、官営メディアは、連日「慶祝ムードに沸く住民たち」の映像や写真を配信している。また平壌に招待した外国メディアに対しては、徹底した取材制限を加えており、現在、平壌から世界に伝えられているのは、北朝鮮当局が「見せたい姿」だけというのが実情だ。
だが実際には住民の生活苦は何ら改善されておらず、指導部への期待も冷淡で限定的だ。北朝鮮当局は、このような住民の厳しい暮らしの実態や不満が海外に伝わることを、極度に警戒しているものと思われる。
(リ・ジンス)