商売人に売るためのワカメを市場の隅で袋詰めする兵士たち。周囲の目を気にしていた。(2006年8月清津市 ペク・ヒャン撮影)

商売人に売るためのワカメを市場の隅で袋詰めする兵士たち。周囲の目を気にしていた。(2006年8月清津市 ペク・ヒャン撮影)

 

1 ビデオカメラが捉えた飢える兵士 II

[2]部隊の食事を「おぞましい」と告白する軍官学校生 [平安北道]下
取材:キム・ドンチョル 整理/解説:石丸次郎
前回記事のキム・ドンチョル記者と兵士たちとの会話から、現在の軍隊の実態について、いくつか語ることができる。説明を加えておこう。

[1]二人の兵士が、民間人のキム・ドンチョル記者に「何か仕事はないか」と問うているのは、これは「アルバイト」をさせてくれという意味である。軍人は衣食住を国家から供給されて暮らしているわけだが、それでは到底足りず苦しいため、現金であれ食べ物であれ、労働力を提供することで不足を補いたいわけだ。

配給のない庶民の場合は、市場に出て商売に精を出すことで生計を維持しているが、軍人が市場に立つわけにはいかない。このように、兵士が「アルバイト」をするために民間人に「御用聞き」をするのは日常茶飯事だという。

[2] おかずにするために野草を取りに出ているというのも情けない話だ。将校にも満足な副食がなさそうである。部下は上官の命令によっておかずを調達しなければならない日常なのだろう。

[3]「自体解決」せよとは、つまり上部からは食糧が供給できないので部隊(あるいは「軍官学校」)では、責任持てないから自活せよと言われているということだ。
「自体解決」しなければならないのは食糧だけではない。キム・ドンチョル記者は次のように言っている。

「中隊は、小隊三つで成り立ち、一〇〇人規模。部隊の施設の修繕や必要な資材の購入も『自体解決』しなければならなくなっている。といっても、中隊長がその資金を出すのか? 一般兵士に出させるのか? それは到底無理なので、中隊に支給される食糧を売って資金にすることがよくある。

開城(ケソン)で服務している兵士の話では、開城には石炭がないから冬場は暖房用の薪を伐ってこなければならないという。そのために薪を運ぶ車を調達することになるが、ガソリンだけは部隊で負担してくれと言われるそうだ。結局金を作るために食糧をジャンマダン(市場)に売って賄うことになる。他に売れるものは部隊にないから」。
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