◆反省みえぬ被告
現在、神戸地裁で運転していた男に対する刑事裁判が行われている。これまでに3回の公判が開かれ、岡田さん夫妻は欠かさず傍聴している。

「息子さんを亡くした岡田さん夫妻」

「息子さんを亡くした岡田さん夫妻」

 

「でもね、疲れるのよ」と育代さん。
「男の顔を見るのもつらい。一度見ただけでもう見たくないと、裁判の間はずっと顔を伏せている」という。
男はひき逃げ運転について「視界が悪かったのでコンクリートにぶつかったのかと思った。人をはねたこととはわからなかった」と繰り返し否定している。事故後、逃走したことについても「子どもが逃げたので追いかけた」と認めようともしない。

傍聴席の知人に向かって手を振るなどしたため、裁判長が「社会復帰したら人間としてやっていけるのですか」と諭す一幕もあったという。
「弁護士に言われたのでしょう。一度だけ、男から謝罪の手紙が来ましたが、文面からはまったくといっていいほど誠意が伝わってきませんでした」と育代さんが振り返ると、征一さんもぽつりこぼした。

「死刑にしてくれとも言えず、これも運命かな、と。どんな刑が出るのか」
罪状は、最高刑が懲役20年の危険運転致死傷罪ではなく、自動車運転過失致死傷罪。
「法定刑が7年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下」の罰である。無免許運転であっても故意な危険運転ではなく、過失とみなされることに、岡田さん夫妻は納得がいかないという。

さらに、警察に対して不信感も募る。
「即死だったかもしれませんが、病院へ搬送せずに検視したことに親としてはどうして病院へ搬送してくれなかったのか、納得がいかないですね。それに、裁判で『逮捕するのに一生懸命だった』と説明していましたが、無理な追跡をしていたのではないかという疑念が拭えません。なぜ、息子が死ななければいけなかったのか。本当のことを教えてほしいです」
求刑公判は12月26日午後2時半から行われて結審。判決は年明けにも言い渡されるという。
【矢野 宏/新聞うずみ火】
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