原発再稼働に向けた動きが加速している。新潟県では、柏崎刈羽原発の再稼働に反対していた泉田裕彦知事が、一転、申請を容認する側に回った。民主党菅政権 時代に停止命令が出された浜岡原発も再稼働を申請した。福島第一原発事故が収束の目途すら立たない中、原発を動かそうとする政府、自治体、電力会社の思惑 とは。京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)

京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

◇東京電力は再建より倒産を

ラジオフォーラム(以下R):東京電力が9月27日、柏崎刈羽原発の6号機および7号機の再稼働に向けた調査を原子力規制委員会に申請しました。こうした動きについて小出さんはどのように見ておられますか?

小出:端的に言ってしまえば呆れています。これまで、日本の原子力発電所というのは安全性を確認された上で建設されたはずなのですけれども、その原子力発電所が本当に破局的な事故を起こして今、周辺の人々が苦難のどん底に落とされたまま2年半以上過ぎてしまっているわけです。
事故の原因がまだ分からない、というかこれから10年経っても分からないだろうという困難な状況が続くわけですけれども、それでもまた原子力発電所を再稼働するというようなことを言う人たちがいるのですね。

R:東京電力がこれほど再稼働にこだわっているのは、このままでは再建計画が破綻する、火力発電に頼っていると燃料費がかさんで3期連続の赤字になり、銀行からの融資が受けられなくなるということが報道で流れています。

小出:本当に馬鹿げた話だと思います。東京電力という会社は日本屈指の巨大会社として経済界に君臨し、政治に金 をばらまいて政治を支配して、マスコミに金をばらまいてマスコミを支配してきた会社ですね。その会社が嘘をついて今回の事故を起こして、何十万人の人たち を今現在も苦難のどん底に落としているわけです。事故を収束しようとすれば一体、何十兆円のお金がかかるか分からない、東京電力なんて何十回倒産しても足 りない、という程の被害が出ているわけです。

だから、本当であれば東京電力なんて倒産させなくてはいけない。再建どころではないのです。まずは倒産させて、東京電力の責任でこの事故は収束でき ないわけですから、もう仕方なく国家というか国民の税金でやるしかない、という事態になっているのです。東京電力が再建出来る出来ないなどという、そうい う議論をすること自体、間違えていると思います。

R:当初、この再稼動申請に難色を示していたと報じられている泉田新潟県知事が、条件付きで容認に変わった背景は何だとお考えですか。

小出:泉田さんの当初おっしゃっていたことは、私は正当なことだと思います。しかし、経済的に苦しい状況が続い てきたという県では、原子力にすがり付いて生き延びを図ったという歴史だってあるわけですし、それによって、原子力にすがりつきながらの経済というものが 既に出来てしまっているわけです。地元の経済団体もみんながまた原子力から利益を得ながらなんとか食いつないでいきたいと思っているわけです。知事という 立場になってしまえば、それを振り切るということはなかなか難しいだろうと思います。
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