地域独占企業である電力各社は、総括原価方式という独特な採算方式を持つ。電力会社はなぜ赤字経営にならないのか。彼らはなぜ原発の再稼動を急ぐのか。その体質に密接に関わるとされる総括原価方式について、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)

京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

◆ 電気料金で埋め合わせればいい
ラジオフォーラム(以下R):電力会社というものは、基本的に総括原価方式で電気料金を決めています。そのため赤字にはならないと言われていますが、これはどういうことなのでしょうか。
小出:はい。絶対に赤字にはなりません。いわゆる会社ですから、本来は必要経費も利潤も経営努力で生み出さなければいけません。でも、電力会社は独占企業で、その利潤は「電気事業法」で保障されていますし、おまけに利潤までも保障されています。「電気事業法」の下で、電力会社は、その利潤として資産の3パーセントを取っていいことになっています。資産が大きくなれば、それに比例して儲けを取ってもよい、という法律の仕組みがあるのです。
R:大きな資産を持てば持つほど、儲けも多くなる・・・。
小出:必要経費と利潤の合計を埋め合わせられるように電気料金を決めろ、と「電気事業法」に書いてあるわけです。電力会社としては、儲けたければ資産を持てばいいし、そうしたら、それを埋め合わせるために電気料金を上げればいい。それでいくらでも儲けることが出来るということをこれまでしてきたのです。
R:原子力発電所は資産としては、うってつけだったわけですね。
小出:おっしゃる通りです。火力発電所をつくるのと原子力発電所をつくるのでは、原子力発電所の方がコストが高くなる。そのコストに3パーセントを乗せたものが利益になるのですから、高いものをつくった方が今までは儲かっていたのですね。
R:本当に消費者を馬鹿にした話ですね。
小出:ただ、今回の東京電力の事故のように、全く予想しなかったようなことが起きてしまうと、東京電力でさえ簡単に倒産してしまうぐらいの被害が出るわけです。今、関西電力を含めた他の電力会社も、これまでは金儲けのために使ってきた原子力発電所が全て不良債権になってしまうかもしれないという危機感を抱えていると思います。
彼らとしては、そんなことはなんとしても避けなければいけない。今まで通り、原子力というのはいいものだ、ということを言い続けなければ、赤字になってしまうかもしれないというところまで追い詰められているのです。
R:日本の法律では、原発に明確な耐用年数を定めていません。適切な保守点検を行い、定期検査をクリアーすれば、いつまででも運転して構わないことになっています。この前の関西電力の株主総会(2013年6月)では、40年経過した美浜原発を更に20年、つまり60年間使うと言っているのですが、これは、原発という資産が毎年3パーセントの利益を生むのであれば、一回コストをかけて作った以上、40年で終わらせるより、更に20年続けた方が儲かるという考えですね。
小出:原子力発電所の減価償却期間というのは16年だったと思います。要するに16年使ってしまえば、施設としては価値がないし、固定資産税も払わなくても済むようになるわけです。後は使えば使うだけ、ただただ金儲けが出来るというわけですから、電力会社としてはこんなにうまい話はないのです。
R:逆に廃炉にすると、資産ではなくなるので、3パーセントを乗せることはできない、ということですね。
小出:もちろん出来ませんし、廃炉の費用も膨らんできます。
R:ダブルで損をするということですね。廃炉の積立金がものすごく不足しているという話もありましたが、廃炉には膨大なお金がかかるのでしょうか。
小出:もちろん、膨大にかかりますし、現在、考えている金額では到底足りません。その不足分もまた、未来の子供たちが電気料金として負わされることになると思います。
R:廃炉を遅らせれば遅らせるほど、ますます将来へのツケが広がっていくのではないですか。
小出:私は全ての原子力発電所を即刻止めて、廃炉にしろと主張しているわけですけども、それをやろうとすると膨大なお金がまずは必要になって、それを私たちが負担せざるをえなくなると思います。ただ、それを嫌って、問題を先延ばしにするのであれば、負担はどんどん膨れ上がってくるだけですので、やはり一刻も早く決断をしてこれまでのツケを払うしかないと私は思います。
R:ここで英断をして即刻廃炉にするのが一番安い方法ですよね。
小出:はい、傷としては浅く済むと思います。

◆ 核のゴミさえも資産
R:電力会社は使用済み燃料棒も資産だといって3パーセントの利潤を受け取っていますが、使用済み核燃料棒はゴミではないですか。
小出:私はゴミだと思うのですが、電力会社の説明によると、使用済みの燃料の中にはプルトニウムという物質が入っていて、それが新たな原子力発電所の燃料になるのだから、これも資産だと言ってきたのです。
R:でも、核燃料サイクルは破綻していますよね。
小出:そうです。ですから、本当のことを言えば、電力会社が言ってきたこと、或いは経産省の認めてきたこと、そして日本の国家が進めてきたことは、本当にはあり得ないことなのです。でも、あり得ないことをきちっと制度として作ってしまい、どこまでも金儲けが出来るようにしてきたのです。
◆ CMも消費者が負担
R:電力会社はCMをやっています。電力会社はこのCMコストも電気料金で賄っていますよね。
小出:そうです。
R:「節電お願いします」というCMをしていましたよね。消費者にお願いをして、そのお願いをするためのCMにも、消費者である私たちの電気料金を使っていたということですね。
小出:そうです。マスコミを自由に扱えるようマスコミにお金をばらまいて、それを消費者から徴収しているのです。
R:本当にこのような仕組みを変えなくてはいけませんが、今回の電力改革で総括原価方式が出てきてはいるのですが、まだまだ続くのでしょうか。
小出:今の状況で言うと、日本の官僚は自分の既得権益を守ろうとしますし、財界と官僚は結びついてしまっているので、総括原価方式を覆すにはまだまだ時間がかかるでしょうし、電力会社の抵抗はずっと続くだろうと思います。
とはいえ、このままで行ける道理もありません。今、電力自由化というものも、どんどん加速していますので、彼らもいずれこの方式が破たんすることは分かっていると思います。電力会社の経営者ならちゃんと未来のことまで見てくれよと私は思います。
R:6月の株主総会でも経営陣に何千万円という報酬が認められたわけですが、総括原価方式だったら誰でも経営が出来ると思うのですが。

小出
:もちろんそうです。経営陣に膨大なお金を払っても、それは全部私たちが電気代として払っているわけですから。
R:この原価総括方式とともに、電力会社に関しては、そこに一社しかなく私たちに選択権がないという地域独占の問題もあります。
小出:電力は地域独占ということで始まったわけですし、独占企業であれば、何らかの形で電気料金を決めるしかなかったわけです。それで総括原価方式をやったわけですけども、そのやってきた結果が今日のようなことになっているわけです。そのことに気がついたのであれば、変えるしかないと思います。
※小出さんの音声をラジオフォーラムでお聞きになれます。

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ