2013年11月16日、河北新報は、福島第一原発1号機の使用済燃料プールの中にある燃料棒70体が東日本大震災以前から損傷していたと報じた。実はずっと以前からある大小様々な原発でのこうした事故について、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんが解説する。(ラジオフォーラム)

京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

ラジオフォーラム(以下R):河北新報の報道によると、地震の前にも燃料棒は損傷していたとのことですが。

小出:燃料棒は損傷するのです。特に福島第一原子力発電所の場合、1号機で損傷が多発したと東京電力は言っています。
福島第一原発一号機というのは1971年から動き始めまして、米国でも原子力発電所の運転経験がまだそれほどない頃に、米国のGE(ゼネラル・エレクト リック社)が作った原子力発電所でした。当時は燃料棒に度々欠陥が生じ、穴が空いてしまったり、割れてしまったりというトラブルがたくさんありました。

R:燃料棒に穴があいたり、割れたりするとどうなるのでしょうか。

小出:放射能が漏れて、一時冷却水が汚れてしまいます。

R:そんな事故が通常運転の時から起こっていたのですか。

小出:そうです。70年代の初め頃はそういうことが年がら年中ありました。「あっ、また穴があいちゃった」、ということで使用済燃料プールの中に移すということをやってきました。
原子炉を動かすというこれまで経験のないことを始めて、様々なトラブルが出てくるという、そのような時代でした。

R:GEの技術者がこの原子炉を欠陥炉であると告発していたようですが、欠陥炉である上に操作にも欠陥があったのですか?

小出:操作といいますか、燃料棒はジルコニウムという金属でできているのですが、その製造の仕方なども手探りで やってきた時代だったのです。ですから、燃料棒を作ってはみたけれど、やっぱりこれでは穴があいてしまう、一次冷却水の水質管理も、このような形では燃料 棒にとって良くないな、と手探りでずっとやっていたのです。

R:今も福島の海を汚しているわけですが、もっと前から汚してきたのですか。

小出:原子力発電所が運転されてしまえば、汚れない空気はないし汚れない海もなかったのです。汚染そのものは、原子力発電所が動いてしまえばどうにもならずに生じてきたのです。ただし、今進行しているのは、これまでとは全然桁違いの汚染であることは言うまでもありませんが。

R:今になって東電はようやく公表したわけですが、これまで放っておいたということでしょうか。

小出:いえ、原子力安全委員会などには、彼らはピンホールと呼ぶのですが、本当に針でつついたような小さな穴があきましたという報告をしていたと思います。ただし、実際に本当にピンホールであったのか、大きく破損していたかということは、実はわからないことです。

R:大きく破損していたこともあったということですか。

小出:例えば、関西電力の美浜1号機という原子炉が1970年から動き始めました。動き始めてしばらく経って、73年に2本の燃料棒が合計170センチも欠けてなくなったという、そんな事故がありました。それなのに、関西電力はそれを一切報告しないまま隠してしまったのです。
その事故は76年になってようやく発覚しました。その時も関西電力は、燃料棒を動かすときにぶつけて落としただけなんだという、うそ偽りの釈明をしました。

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